中国最大のイベント、2月5日の春節前夜「除夕(=大晦日)」まで、あと2週間を切った。
一昨日から「春运(=春節帰省のための交通量増加)」が始まり、いよいよ春節に向け
一気に慌ただしくなり始めた。(※春运の詳しい説明はこちらの記事へ)
街は「过年(=年越し)」に向け、干支の豚を飾り付けたり、年越し仕様に装飾したり。
その商機にそうように大型スーパーや百貨店、さらに屋台に至る街の至る所で、
縁起物の「对联」を販売し始めた。
そこで今日はこの「对联、中国结、窗花」について記事にしたいと思う。
(※中国独特の文化のため、単語一つ一つを言葉にして説明しても正確に伝えられる保証がないので、まずは実物のお写真をご覧いただきたいと思います。)
昨年まではMETROで購入していたが、近所のカルフールの方が品揃えが良いことに気づき
家族3人でお店へ。ちなみに中国語では「家乐福 Jiālèfú」と表記する。
まず売り場に入るとすぐに「压岁钱(=お年玉)」の袋が並ぶ
2019年は豚年のため、豚にちなんだお年玉袋も多い。
今ではWechat等の電子マネーでのやり取りも増えたが、はやり縁起物として
「出かける時は忘れずに!」である。
基本的には就職すれば压岁钱はなくなるが、それでも義両親から息子嫁へ、上司から部下へ
と言うように压岁钱を頂けることがある。
金額については本当にさまざまで、100元~2000元(それ以上)と言うのが相場である。
売り場で次に見えてきたのが「福字」。
玄関のドアの外側、内側に貼るあの縁起物である。(写真はドアの内側編)
中には「倒福(とうふく)」と言って、福の文字を逆さまに貼り付ける家庭もある。
「福」の文字は現在「幸福」の意味で使用されることが多いが、倒福では「福気・福運」の
意味で使用されている。その福が到(中国語の発音はdào)るようにという願いを込めて、
倒(dăo)して貼ることが一般的となっている。
倒福の習慣に関しては明洪武帝の皇后であった馬皇后の伝承がある。
とある春節に際し洪武帝はお忍びで市井を散策した際にとある人物の描いた年画(春節用の縁起ものを描いた絵)を目にした。そこには豊作を願った纏足をしていない西瓜を抱えた女性が描かれていたが、洪武帝は「懐西(西瓜を抱える=淮西と音通)の婦人の足が太い」という画題が、淮西出身(養父郭子興が安徽省定遠県の出身)の馬皇后が民間の出身で纏足をしておらず気品に欠けると嘲笑したものと考え、年画を描いた者を処罰しようとした。
宮廷に戻った洪武帝は年画を描いた人物を調べさせ、無関係な者の家には「福」の文字を書いた紙を貼るように命じ、翌朝「福」の表示がない家の者を処刑しようとした。馬皇后はこの計画を知ると、無実の罪で処罰される民衆に同情し、明け方までに全ての家に対し「福」の表示を貼ることを命じた。
馬皇后の命により翌朝城内の家中に「福」の文字が貼ってあり、洪武帝の命を受けた士兵はどの家の者を処罰するか分からなくなっていた。しかしその中の一軒が文字を知らなかったために「福」の文字を逆さまに貼ってあることを発見し洪武帝に報告した。
洪武帝は福を倒して貼るということは民衆の生活が苦しいことを皮肉った行為であると激怒し、御林軍に対しその家の者を斬首するように命じた。またしても夫である洪武帝により無辜の民衆に危害が及ぶことを恐れた馬皇后は機転を働かせ、その家の者は洪武帝の使者が訪問することを知って故意に福を逆さに貼って「福が到る」を表現したと洪武帝を説得し、無辜の民衆に危害が及ぶことなく済んだというものである。
それ以降善良な馬皇后を顕彰し除夕(大晦日)に民衆は門上に「福」の文字を大書した赤紙を逆さに貼り、一家が平安であることを願ったと言われている。
誰もが幸せを願い、売り場もその思いに“応える”ため、多くのスペースを割いている。
さらに売り場を奥に進むと「对联(ついれん)」が見えてくる。
ちなみに「春聯、門対、対偶、春貼、対子、桃符」など、いずれも同じ意味である。
これは玄関のドア両脇に張り付けられ、上聯は右側、下聯は左側に位置する。
また上辺にあるのは「横批」と呼ばれる。
歴史は古く、秦の時代から存在したとされる。
また上聯と下聯、つまり右側と左側の文字が対になっており、(それ故「対」聯と言われる)
「福」に対し「財」、「似」に対し「如」(中国語ではどちらも「~ようだ」と言う意味)
さらには使う文字や音にも多くの決まりごとがあるため、この対聯を創作できる人は
歴史上に名を残した人、と言っても過言ではない「超人」たちなのだ。
袋の中には「对联(上聯と下聯)」と「横批」の3つが、ひとまとまりになって入っている。
さらに「中国结(=中国結び)」も、売り場で見やすい場所に陳列されている。
これは中国大陸及び台湾で考案・発展した、紐を用いた伝統工芸である。
数種の基本結びと変化結び、それらの組み合わせより成る。中国結芸、結芸とも呼ばれる。
また結ばれた形が中国の「中」にちなんで作られている。
「灯笼(=灯篭)」は家庭円満、事業発展、豊衣足食という意味だけでなく、幸福、希望、
活力、円満、富貴等の象徴でもあるため、春節に飾る習わしである。
また「年年有余(=毎年お金が残るゆとりのある生活ができるようにと言う願い)」の
「余」の発音と「魚」の発音が同じことから、魚をモチーフにした縁起物も、よく目にする。
各部屋の窓ガラスに張りつける「窗花(=窓花)」。
この窓花は地域により貼る、貼らないが分かれるようだが、北方は比較的貼っている家庭が
多いように思われる。
この習俗を調べてみるが、あまりしっくりしたものが見当たらず、多くは雰囲気が
華やかになるというような記載が多かった。
さて、これまでは売り場の模様をお伝えしてきたが、今からは実際我が家が購入したものを、
ご覧いただきたいと思う。
(一言先に触れておきますが、今回は瀋陽は我が家、北京は義弟+両親が住み、天津は義弟の奥さんとお母様+子供が住む。そのため3軒分を購入したため、これほど多い縁起物が揃いました。)
まずは「福字」。
そして「对联」と「横批」、1つ目@瀋陽
2つ目@北京
3つ目@天津
そして各部屋に貼る「窗花」。金銭の神様もご一緒に。
ただ今年はご両親の北京に移動するため、移動日の朝に張り替えようと思っている。
最後に2018年の春節に、わざわざ日本人の友人が遊びに来てくれたこともあり、
一緒にした爆竹と花火の模様をご覧いただきながら、今日はお別れしたいと思う。
(ちなみに爆竹は、最少の2000発。「怖い」を連発する友人の歓声(?)付きである)