冠婚葬祭。
これらは例え日本人同士であっても、住む地域や習慣、個々の考えの違いにより、
顕著に文化の違いが垣間見られる。それが国を越えれば、その違いは明らかである。
そこで今日は、おめでたい「婚」に注目していきたいと思う。
まず中国の法定結婚年齢は、男性が22歳、女性が20歳である。
しかし中国も晩婚化が進み、データによると初婚平均年齢は男性が29.2歳、女性が27.1歳。
国際化が進み、伝統的な思考に変化が帯びてきたとはいえ、中国はまだまだ
「结婚生子(=結婚して子供を産む)」と言う考え方が根強い。
そのため30歳を過ぎても結婚していなければ、特に女性は「剩女(=婚期を逃した女)」と
言われることが多い。もちろん単語としては剩男も存在する。
剩男、剩女のために本人に代わり、公園などで開かれている「相亲角(=お見合いコーナー)」に
両親が参加し、我が子の“売り込み”をしている現場もよく目にする。
(※「家长相亲角(=父兄お見合いコーナー)」と呼ばれることもある)
運命の赤い糸で結ばれた相手を見つけ出し、レッドカーペットを歩く新夫婦。
地域により同じ漢民族であっても、結婚式の方法や形式は様々である。
例えば上海では結婚式は夜に行われることが多いが、瀋陽では昼に行われることが多い。
また結婚式は日本のように事前に出席確認を取り、席順も決まっている訳ではなく、
おおよそは決まっているものの、当日臨機応変な(=行き当たりばったり)という感じである。
席も急遽追加されたり、自分たちで都合よく移動したりもする。
服装は今でこそある程度TPOをわきまえる人が増えてきたが、以前新婦の父親が
ヨレヨレのポロシャツで参加していることもあった。
当時留学生だった私は、周りもアドバイスをしてあげないのかと不思議に思ったりした。
とは言うものの、のちほどビデオでもご覧いただけるが、日本人からすれば
「普段着?」と思うような恰好で参加されている方も、実はかなり多い。
ただ逆に日本人として注意が必要なのは、日本のように黒色のスーツに白のYシャツ&
ネクタイは、お葬式を連想させるため(白と黒という配色が)NG。
そのため配色には十分気を付け、スーツを着用される場合はネクタイの色に工夫をされたり
暗い色のネクタイしかない場合は、いっそノーネクタイで参加される方がベターである。
女性はできるだけ華やかな衣装を身にまとい、お祝いムードを高められることをオススメしたい。
これほど中国での生活が長くなると、今まで20回に届くほどの結婚式に参加させていただいたが、
一度だけ新郎側から「着物を着て参加してほしい」という要望を受けたことがある。
ただ民族や宗教、文化に関わる衣装は事前に相談するのがマナー。
参加者の中には「日本がタブー」という方も、いらっしることへの気配りを。
さらに結婚式の主役は新郎新婦、プラスご両親である事もお忘れなく。
新郎(あるいは新婦)の友人、上司や同僚として参加されたとしても、必ずご両親にも
祝福の一言を添えられると、今後のお付き合いがよりスムーズになることも。
日本人と知って招待を受けた場合は、ご両親も気遣ってくださる場合が多いが、
それでも当日いきなりご挨拶にいくと「誰?」ということにもなりかねないので、
新郎(あるいは新婦)がご両親の傍にいる時、もしくは「新郎の〇〇(例えば上司)」と、
一言関係を添えてもらえる人が、近くにいる時がベスト。
さて、お待ちかね、実際の結婚式の模様をお届けしたいと思う。
少し背景をお話しすると、新婦側の母親が政府機関の重役だったため、
参列者600人という、超盛大な結婚式が執り行われた。
(ここからも中国では「つながり」「コネ」が大切なのも伺える。)
新婦の母親も第二の主役であるとはいえ、衣装替え3度と言う事実から、その力の入れようを
感じとっていただけるのではないだろうか。
まず結婚式が行われた高級ホテルのロビー。新郎新婦の写真と共に、会場案内を掲示。
出席者受付。と言っても日本のように事前の出席者リストと照らし合わせるようなことはない。
出席者が専用のサイン帳に自分の名前を書いていく。また红包と呼ばれるお祝儀を渡すための
祝儀袋が用意されている。忘れてしまった方は、こちらで準備が可能。
基本的に红包は直接本人、あるいはご両親に渡すため、受付の人に渡すことはない。
(地域によって異なるため、周りの雰囲気を見ながら、臨機応変に)
写真左側下は縁起のいいお菓子、そして右側はタバコである。
またホテルの駐車券が必要な方のために、「駐車券登録表」が準備されていた。
記入をすると、無料駐車券を頂けることに。
会場入り口まで来ると、ハーブ演奏者が生演奏でお出迎え。
今回は新婦の母親の友人として参加。指定のテーブルに案内される。ちなみに席は自由。
テーブルにはタバコやお酒、ジュースやお菓子などが並べられている。
これは式が始まる前から、自由に食べたり飲んだりしてもよい。
食器も紅白を意識した組み合わせ。
「红糖」と呼ばれる、飴やチョコレートを入れた縁起物。
式典が始まるまで、招待客は自由気ままに待つ。
マネージャーらしき人もリラックス。でもこれは緊張感がなさ過ぎ…(笑)
隣の従業員の視線が、全てを物語っているような気がする。
気を取り戻し、煌びやかな式場。
花道を彩る花。造花もあったが、多くは生花を使用。
主人公たちの舞台には、いろいろな仕掛けが施されている。
英語スピーカーによる祝福ソング。会場の雰囲気も一気にヒートアップ。
この後始まる結婚式に花を添える。
瀋陽でも“外国人”は増加傾向にあるが、まだまだ少数派。
中国語が話せる“外国人”の需要は、物珍しさと言う意味で“重宝”される。
会場が一旦暗くなり、二人の紹介ビデオが流れる。
そして司会者の登場。第三の主役と言っても良いほど華やかである。
中国の司会者は、日本のように「裏方」という概念ではなく、あくまでも前へ。
衣装も「紅白歌合戦」を思い浮かばせるような、華麗なもの。
そして式典は一番の盛り上がり。いよいよ新婦の登場である。
新婦は新郎の待つ舞台へ一歩、また一歩と進んでいく。
その後舞台では両家から一人ずつご両親が来賓に対してスピーチを行い、続いて
友人代表のスピーチや指輪の交換などが行われる。“儀式”が一通り終了すると、
新郎新婦、ご両親は舞台を後にし会場に降り、来賓の方々のご挨拶へ。
司会者はここまでで仕事が終え、次の結婚式会場へ。
(もちろん食事をしながら、参列者を交えたゲーム等がある場合も。その際の司会進行は、
友人がされることが多い。)
新郎新婦、ご両親が舞台を降りお酒の入ったグラスを片手に、会場の参列者一人一人に
ご挨拶をしに回ってこられたこの時に、红包を渡すことが多い。
また新郎は特に一人一人とお酒を飲み交わすため、酔っぱらってしまい座り込んでいる
姿も、今までたくさん見てきた。(しかも北方地域は度数の高い「白酒」である)
このような大型結婚式ともなると、いちテーブルずつの挨拶となることも多い。
この頃から、テーブルに一気に料理が運ばれ始める。
まずは凉菜と呼ばれる前菜が並べらてから、メイン料理が運ばれる。
結婚式にちなんだ、おめでたい食材や高級食材である海参や海老、帆立。
特に瀋陽は海に面していないため、海鮮料理は高級食材で、最高のおもてなし料理である。
新郎新婦への声掛け、ご両親への声掛けが終わり、食事も満足した時点で、自由に退席し、
帰宅することになっている。
日本のように明確な終了宣言があるわけではないことが多い。そのため料理が出そろい
お腹もいっぱいになり、落ち着いたあたりで、参列者も一気に少なくなる。
さすがに日本の方の友人として、日本で行われる結婚式に参加する中国の方は
日本でのマナーもある程度はご存じであろうが、日中でこんなにも違いが存在する。
当日お互いが困らないように、もし中国人の友人をお招きするときは、あらかじめ
流れや異なる点を伝えておいてあげることも、気遣い、優しさだと私は思う。
特に当日座席が決まっていること、事前の出席確認で出席希望をした人のみが、
当日参加できることなど、中国の形式とはずいぶん異なるため、
結婚式に参加する方だけでなく、日中言語の相互学習をしている方々も、
結婚式をテーマにし違いを話し合ったりすると、お互いとても勉強になるだろう。
また日本でも同じように、中国でも地域によって形式が異なるため、今回はあくまでも
いちケースととしてご覧いただければ幸いである。
分からない場合は、直接本人に聞くか、当日その方が忙しいようであれば、だれに聞くべきか
事前にお伺いを立てておくことは、「私のことを大切に思ってくれている」「メンツを
立てようとしてくれている」と、きっとその方との信頼感を強いものにしてくれるはずである。
最後に、このブログを書くにあたり快く承諾してくださった新郎新婦のお二人、
並びにご両親に、心より感謝を申し上げたいと思う。
そして新郎新婦、ご家族の方々により大きな幸せが訪れることを願ってやまない。