タイトルだけをご覧になり、「政治の話??」と思われた方もいらっしゃるかも知れません。
もちろん国と国の話をするときは、政治の内容から切り離せない時があります。
しかし私はこのブログでは、そういう話は少し置いておいて、違う角度から
お話したいと思っており、今日も当然のごとく政治のお話ではありません。
実はここ2,3日、この内容を記事にするかどうかを悩んでいました。
今までも「生の中国」をお伝えしてきたと、私なりに感じております。
ただ今までは、ポジティブな内容が多かったのも事実です。
今日の記事はある意味ネガティブな部分であり、
もしかすれば、いや、おそらく炎上するかもしれないと覚悟を決めての内容です。
しかし本当の中国の姿をお伝えするとは、“こういう部分”こそ、
しっかりと話すべきだと思い、パソコンの前に向かいました。
では、早速始めたいと思います。
中国では安倍晋三首相への支持率が、ここ最近の首相の中でとりわけ高い。
この理由の一つに(私が思うに)、中国の多くの方の考え方と安倍首相の考え方に
通じるものがあるかではないか…、ということである。
先日9月11日に、第4次安倍第2次改造内閣が発足し
小泉進次郎氏が環境大臣として、田中角栄氏以来男性最年少で入閣した。
それまで小泉氏への評価といえば、人気が高く、温かな賛美が多かったように感じている。
しかし8月に、フリーアナウンサーの滝川クリステル氏と「授かり婚」をしたあたりから、
小泉自民党厚生労働部会長に対する風向きが、少しばかり変わり始めた。
9月22日、アメリカニューヨークで開かれた国連総会の環境関連会議での
「朝食ステーキ」や、「セクシー」発言などで、小泉環境大臣に対する風当たりは、
猛吹雪のように一気に強く、厳しいものへと変わっていった。
「気候変動問題はセクシーに」小泉大臣が国連で演説(19/09/23)
マスコミの評価や世論、ネットの書き込みやコメントを見ていると
「まるでポエム」
「何を言っているか分からない」
「中身がないのは分かっていたが、メッキがはがれてきた」
「もともと口だけが達者なだけで、具体的な政策も行動も伴っていない」
「今までが持ち上げられ過ぎた。なにが総理候補だ!」
というようなものをよく目にする。
これらの発言を見て、真っ先に私が感じたことは
「ここまでを見越し、安倍首相は小泉氏を環境大臣にした! のかもしれない…」
ということだ。
そもそも安倍首相は小泉環境大臣のことを、あまり良くは思っていない(はずである)。
その理由の一つは、小泉環境大臣の父である元首相の小泉純一郎氏が
安倍批判を繰り返していること。
そしてもう一つは、過去二回の総裁選において「反安倍派」の石破茂氏に小泉氏が
投票しているからである。
しかし、結果として安倍首相は小泉氏を環境大臣として入閣させた。
言葉を選ばないで発言するとすれば、安倍首相のこの方法は、
「自分の手を汚さずして、相手の評価を下げる」と言えるのではないだろうか。
つまり、明らかな力不足の役職に配置し、周りから「あいつは使えない」との
レッテルを貼り失脚させるやり方は、中国の人事の現場において
よく使われる手段のひとつである。
この春話題になった『都挺好』というドラマにおいても、この方法が中国社会で
普遍的であることを、垣間見ることができる。
(あまりお話しするとネタバレになりますので、詳しくはドラマにて)
・都挺好 01(姚晨、倪大红、郭京飞、高露 领衔主演) - YouTube
逆に相手が予想以上のがんばりを見せ、実績が上がれば
「先見の明がある」などという、トップとしての評価も手にすることができ
どちらに転んでも、自身はあまり大きな傷にはならない。
実際今までの小泉環境大臣の評価において、安倍首相の責任問題追及や批判は
それほど目立ってはいない。これもおそらく、あらかじめメディアの情報操作の
予防線を張ってあったのではないか…、と思われる。
すなわち、情報戦も制しているように感じる。
ここまで書いて、お気づきの方もいらっしゃるだろう。
安倍首相の考えは、中国の多くの方に共通する部分がある(ように思う)。
となれば国家として、あるいはビジネスの場において中国の方と接するときは
相手はこのようなスタンスで考えている、行動してくるかもしれないことを、
知っておく必要があると思う。
私が今まで体験してきた、中国の方がトップの会社での実話をしたいと思う。
売上が伸び悩んでいたが、子供の進学のため給料アップを訴えた先輩Aさん。
会社のボスはいくら欲しいかを面談し、A先輩の提示額を即決採用した。
同時に現給料と社員からの提示金額の比率を計算し、
その比率分をノルマに上乗せした額をA先輩に見せた後、笑顔で一言。
「神妙な顔つきで訪ねてきたから、何事かと思ったよ。退職かとさ。
給料アップだなんて、なんだ容易いことだよ。希望金額は責任を持って叶える。安心したまえ。
で、最後に一言聞くが、ノルマを達成できなければ、君はどうしてくれるんだい?」と。
神風が吹かない限り、自分の実力ではとても達成できそうもないノルマだったため
「現状維持で構いません」と社長室を後にしたA先輩。
もう一つのケースは、営業部部長昇進告知の部内ミーティング。
幹部の口からは、トップセールスでチームからの信頼の厚いB課長ではなく、
自己プレーに走り、チームからは煙たい存在のC課長が営業部長に。
C新部長には専属部下として、D君とE君の2人の新人がついた。
“雑用”は新人君にさせるC新部長。そのためテレアポや、相手先との通常連絡業務は
全て彼らの仕事。
C新部長は部下が取ってきた契約書に目を通すだけで、今まで以上の待遇が待っていた。
ただCさんを部長にしたには裏があり、新人君を通してCさんの顧客リスト情報を全て把握し、
さらには顧客にD君とE君を信頼させ、C新部長から奪うすることが本当の狙い。
数か月後、顧客を失くしたCさんの売り上げと評判はガタ落ち。
Cさんが(会社を追い出された形で)退職しても、顧客情報はすでに会社が把握。
社長としては煙たいCさんは去り、彼の持っていた顧客情報は手に入り、一石二鳥。
もちろん中国だからという訳でも、日本だからという訳でもなく、
上記の事は世界中のどこにでも、ありふれていることなのかもしれない。
しかし、私が今までそれまで日本で行ってきた仕事は
白(良い)か黒(悪い)かで、グレーの部分は黒として考えられることが多かった。
そのため中国のビジネスの世界、身を持って体験したことは、
それまでの純粋で真っ直ぐな私には、かなりの衝撃であったし、
「グレーはあくまでもグレー、黒ではない」という考え方を受け入れるのには、
かなりの時間がかかった。
1時間に自動車が1台通過すればいいほどの、田舎の道路になれていた私には、
この“ビジネス”という大都会の道路では、規則正しく、安全運転をしていても
時には事前の方向指示器なしでの車線変更、時には割り込みでヒヤッとさせられた。
さらには信号無視もお構いなし、挙句の果てには青で発進したはずの私が
前方不注意だと言われることさえもあった。
そんな苦い経験を繰り返す中で、ルールに従っているだけでは安全は確保できない、
自分も時には“流れに乗らなければ”と、思い知らされた。
少し見方を変えてみることによって、今までとは違った景色が見えてくる。
ビジネスの道路で、若葉マークを付けていたあの頃を思い出しながら
安倍首相が小泉氏を環境大臣に起用した“本質”を、想像したりしていた。
もちろん、そんな人たちばかりではないが
異文化のビジネスの世界で勝ち残っていくのは、なかなか大変なことだったりする。
でも、振り返り己の成長を感じられた時は、なんとも言えない喜びがあったりもする。