【前回のあらすじ】
2019年になるあたりから、学区房(=進学校の学区内の家)を購入するために、バタバタとしていた我が家。
そして無事購入。やれやれと思っていたところにさらに忙しさに追い打ちをかける出来事が…。
新居購入、と言っても戸籍を登録するためだけの“マイホーム”。
廃墟のような新居は、やはり総面積40㎡未満の小ささで、我が子が馴染んでいる今の
こども園には車で半時間以上。
幸いその界隈は商業施設が立ち並ぶ地域でもあり、(地方出身の)一人暮らし希望者も多い。
元家主さんも、もともと賃貸マンションとして女性に貸し出していた。
その女性がさらに「継続」を希望してくれため、そのまま住んでもらうことに。
学区房購入にあたり、我が家はもう一つ大きな決断をしていた。
今まで住んでいたマイホームを売却するということ。
つまり今まで住んでいたマイホームで、学区房を購入しようという考えである。
言葉にすると簡単だが、このマイホームは主人が初給与からコツコツ貯めて購入した
思い出がたくさん詰まった家である。
主人が独身の1人から、私が加わり2人となり、我が子が生まれ3人に家族が増えていく経緯も
ずっと見守ってくれていた家。
それ故に手放すと決心した時、頭では分かっているものの、心は少し動揺しているようだった。
また学区房を購入する目的の他にも、以下のような条件が売却を後押しした。
- 我が子の小学校入学に合わせ、学校の近くに移らなくてはならない(現在の家から車で30分以上離れている)
- 北京や上海とは違い、瀋陽の不動産価格がこの先ずっと右肩上がりだとは思えない
- 近所にまもなく土地開発会社によるマンションが2団地、完成する(マイホームのマンションは築10年)
- マイホームは最上階だった(中国は建設工事に対する信用度が低く、最上階は雨漏りがしやすいため、売却しづらい)
一般的に中国人の「持ち家」に対する思いは非常に強い。
特に義両親の世代は、歴史的背景もあると思うが、執着度が高い。
義両親が瀋陽に所有している家は、主人が子供時代を過ごしたマンション。
すでに築30年以上経っている。
ご両親が瀋陽に来られても我が家で一緒に過ごされるので、その家に住まれることはないが
「何か起こった時のための『財産』」として、今まだ手放さずに貸し出している。
数年前、主人と(今回手放すことになった)家を売りに出そうと思っている話を、
ご両親に伝えた際、新しい持ち家の契約をしてから、今の家を手放しなさいと言われたほどだ。
今回は学区房を購入しとりあえず「持ち家」であるため、そして何より孫の一生を
左右する教育のためであったので、家を手放すことを許されたのだった。
そんな背景がありつつも、主人がどうしても手放そうと決意した一番の理由を、
今回口に出したわけではないが、私は察しがついている。
それは今まで住んでいた団地の住民の教養・品行レベルが高くなく、不満に思っていることだ。
例えばエレベーター内でタバコを吸う、痰を吐く。ゴミをドアの外に出して何日も処理しない。
そんなことが日常茶飯事だった。
この場所(レベル)から抜け出し、さらに高みに向かいたいという主人の強い思いと、
孟母三遷の教えを、「売却」という形で身を持って示したのである。
実はマイホームは、最悪小学校入学までに売却できればと比較的長いスパンの
心づもりをしていた。それが幸いにしてすぐに買い手が決まり、嬉しい悲鳴ではあるが、
春節前から急遽バタバタと、新しい住処を探さなければならなくなったのだ。
今回最優先条件は、我が子のこども園に歩いていける距離であること。
そのためこども園の近くの賃貸不動産を5つほど訪ね、合計20件近い物件を内見した。
予算は1500~2000元(≒25000~33000円)。
中には5ルーム、2リビング、2ユニットバスの合計170㎡という物件もあった。
(値段も手頃で主人の印象は良かったが、親子3人で暮らすにはあまりにも大きいと却下)
私達の希望価格では、多くは2or3ルーム、1or2リビング、1or2ユニットバスの合計100㎡前後。
少しお手頃だなと思うと、古さや遠さ、広さなど、それなりに目をつむるべき条件があった。
当然ながら、男性と女性の差からだと思うが、主人と私で第一候補の物件が異なった。
合計5軒の不動産にお願いしたこともあり、重なって紹介される物件が出てくる。
主人の第一候補も、私の第一候補も異なる不動産から合わせて2,3度紹介された。
男性の案内人は主人の物件をを強く押し、女性の案内人は私の物件をオススメした。
主人の選んだ物件はとにかく見た目が美しい。
「お金には困ってないの」と、内見に付き合ってくれた家主さんがおっしゃった通り、
設置の電化製品は超一流メーカのものばかり。壁も一つの汚れもなく真っ白。
大家さんからすれば4つある持ち家の1つにしかすぎず、このマンションでは数日間住んだのみ。
ホテルのような錯覚にも陥る物件に、主人を始め男性陣は興奮気味。
しかし女性目線からすれば、収納スペースもなく(とにかく広いスペースを強調)
キッチンの動線も使いづらく、壁も白すぎるだけに我が子が汚すであろうことが気になった。
私の選んだ物件は、とにかく収納スペースがあり、キッチンが大きめ。子供部屋は
本棚が設置されたおり、家主さんも今年小学校に入学した子供さんがいるとのことで、
ある程度壁も汚れている。そして瀋陽では珍しくバスタブがあった。
こちらの家主さんも、子供さんのために学区房を購入し、学校から遠いためこちらを
貸し出しているという物件だった。
主人は「きみがあっちが良いって言うなら、それでも良いよ」と言いつつ、名残惜しそう。
そこで最後は、我が子の気に入った方で決めることにした。
主人の第一候補に入室したときの我が子は、特別何も反応をしなかったが、
私の第一候補には、入室すると同時にニコニコし始めた。どうやら構造が気に入ったらしい。
ということで、決定した住処。せっかくなのでその一部をどうぞ!(写真は内見時)
ある程度の予測はしていたとは言え、値段交渉を始め、入居日、鍵の受け渡しなど、
契約締結までは、それはそれは長い道のりだった。
こういう経験するたびに、中国の方の交渉の進め方を目の当たりにする。
主人は仕事柄、こういう場を何度も潜り抜けてきているが、それでも交渉術は天賦の才能が
あると思えて仕方ない。隣で交渉方法を聞いていて、舌を巻くことが多い。
日本人同士のような「暗黙の了解」と言うようなことは、何一つなく、
1つ1つ全て契約書に記載していく。玄関の鍵を何本貸した、壁はどこに大きな傷がある
もともと設置していた家具は具体的にはどんなものがいくつあると、写真を添えて
全て書き記した。
こちらの契約がやっと終わったと思ったら、早速本格的に引っ越しの準備。
なぜなら売却した家の期限が、3月15日までと迫っていたからである。
売却したのが2月1日。春節を挟んだため実質30日ほどで、物件探しからしなければ
ならなかった。
ただ中国では多いことだが、大きな家具はほとんど動かすことがない。
今回我々も家を売却した際、タンスやベッド、本棚、冷蔵庫や洗濯機、電気温水器、靴箱
キッチンテーブル、浄水器などは売却値段の中に含まれていた。
また賃貸の部屋の多くは、引っ越し後の家も「领包住」と言い、鞄一つあれば住めるような状態で
貸し出してくれる(実際には布団や細かい電化製品は持参)。
そのため家具は運ぶ必要なく、さらに古い家から新しい家へは2㎞程しか離れていないこと。
さらには引っ越し業者の荷物の扱いは荒っぽく、大切な書籍や物が壊されてしまうことが
多いことなどから、自分たちで少しずつ荷物の移動をすることにした。
(ちなみに今回の荷物で一番多かったのは、書籍。主人も私もかなりの本を所有しており、
これらの梱包と移動に非常に疲れた。)
やっと詰め終わったと後ろを振り返ると、我が子が全て箱から出してくれていたという
トラブルにも何度も遭遇しつつ、昨日神様の移動を終え、全ての荷物の移動が終了。
(ネット画像から拝借)
数年後、我が子の小学校入学に合わせ、もう一度引っ越しをしなければならないが、
その時は業者に依頼をしようと、主人と話し合ったという事実が、今回の引っ越しの
辛さを物語っているような気がする。
さて、やっとネットも開通し、これからこの家を拠点にいろんなことを発信していきたいと思う。
また瀋陽も、一日一日と温かくなりはじめ、最低気温もマイナス一桁前半まで届くようになった。
これから短い春の季節、瀋陽では秋に次ぎ、良い季節となる。
新居にご興味を頂ける方は、ぜひ瀋陽観光も兼ね、我が家へどうぞ!(笑)