実は年明けから、バタバタとした日々を過ごしていた。
その訳は「家を購入し、貸出し、売却し、借り&引っ越した」からだ。
おそらくこの一文だけでは「はぁ?意味不明」と言われて当然だろう。
そのため「家」にそれぞれの連体修飾語を付け加え、もう一度書いてみることにする。
「学区房(=進学校の学区内の家)」を購入し、そしてその「学区房」は一旦貸出した。
さらに今まで住んでいたマイホームを売却し、最後に我が子のこども園の近くに家を借り
今日無事に引っ越してきた。
何となく分かったような、やはり分からないような…。
そこで今日は「学区房」を話題の中心とした記事を、ご紹介したいと思う。
中国も日本と同じで、小学校6年間と中学校3年間は義務教育である。
公立学校への入学は、これまた同じ「学区」という概念があるのだが、日本と異なる点も存在する。
日本は学区内に「現住所」があれば良いとされているため、マイホームは賃貸でも構わない。
一方中国瀋陽の場合は学区内に戸籍がなくてはならず、戸籍を登録するには学区内に
購入したマイホームが必要である。
しかも今回の学区において入学許可認定されるためには、戸籍登録手続を入学年の
3年前までに完了しておかなければならない。
(2022年9月1日入学の場合、2019年8月31日までに購入&戸籍登録を完了)
この学区房の制度は以前から存在したが、瀋陽は入学年の1年前までの手続き完了で認可された。
しかしこの2,3年ほどで、入学3年前までと期間が大幅に変更された。
そもそも進学校にこだわらず、どこの小学校でもいいとなれば学区房などは考慮する必要がない。
今戸籍がある学区の小学校に入学すればよい。しかしここは今なお人口最多の国。
競争は厳しく、学歴社会はまだまだ根強い。最終学歴と卒業校の名前が一生を左右する
と言っても過言ではない、それが中国である。そのため教育熱心な親御さんも非常に多い。
ただ学区房は、やはりそれなりのお値段がする。
現在瀋陽の平均月収は5797元(2018年04月02日 瀋陽新聞広播発表)。
就職ニーズの高い都市TOP50のうち46位である。
別荘や高級マンションを除く学区房でない住居の1㎡の平均金額は、1万元前後である。
それに引き替え、学区房となれば(学校のレベルにより、金額が異なるが)1.3万~2.2万元ぐらいに
一気に跳ね上がるため、なかなか手が出ないのが現実である。
我々夫婦は「まずは学区房の購入が必要かどうか? 購入するならどの学校にするか?」
その答えを探るべく、色んな方々にお話を聞き調査をし、実際に各レベルの学区房にも
足を運んでみた。
例えば街の中心部から車で40分。有名進学小学校の分校で、学校以外に何もない学区房Aタイプ。
小中学校がエスカレート式になっており、新築購入で小学校への入学が約束されることになる。
値段に目がくらみ中古物件を購入した場合、中学校はテストで合格したらという条件に
なるとの事だった。こちらは辺鄙と言うこともありお値段は、1㎡1.4万前後。
学区房Bタイプは超有名進学小学校の本校。場所も街の中心部に位置し、地下鉄の駅下車すぐ。
2年前に完成したビルで、近代的でセキュリティーもしっかりしており、快適で心地よい空間。
しかし商業スペースのゾーンもあり、区分分けをした場合「純住居建物」とみなされず
「住居及び商業ビル建物」との区分になる。そのため招集は「純住居建物」居住生徒の
応募が終了し、空きがあった場合の二次募集からの招集条件となる。お値段は1㎡2万元から。
学区房Cタイプ。学校は学区房Bタイプと同じ。地下鉄の駅からは少し距離がある。
築30年以上、エレベータなし、周りのビルに光を遮られ昼間でも全く光が差し込まず、
外から見た印象は「廃墟?」と思うようなマンションの一室。
総面積は40㎡に満たないものも多く、あくまでも小学校入学のための戸籍登録用の家。
ファミリーでは住めないため貸し出す人が多い。それでもお値段は1㎡1.6万ぐらいから。
実は我々夫婦子育て理念は、学問最優先(良い大学に入学して欲しい)ではない。
それよりはまずは自立をし、自分でお金を稼ぎ出し、生きて抜いていく力を養ってほしいと
考えている。つまり「自立心」と「生存能力」の最優先主義である。
その一方で「学区房」も選択肢の一つとした訳は、孟母三遷の教えのように「環境」を
整えることは、特に年齢が幼い場合、親の役割の一つではないかと考えたからである。
この環境には「学習環境」でなく、ご父兄をはじめとする「ご家庭の教養・品行レベル」
という環境である。
話しは少し逸れるが21世紀に入り、さらにオリンピックと万博を経て、目覚ましい
経済成長を遂げた。
生活水準が豊かになるにつれ、教養や品行レベルも上がってきた。
しかし人口という分母が大きいため、人民全体の足並みがそろうまでにはまだまだ
時間がかかりそうである。
もちろん絶対ではないが「学区房」を購入する家庭の背景は、“高額収入者”という以外にも
高学歴であったり、さらには海外経験で外国人に対しても免疫があったり、万が一
排他的感情を抱いたとしても、うまくコントロールできる教養や品行レベルを備えている方が多い。
母親である私が日本人であることは、変えようのない事実。
さらに日本と中国は、歴史的にも“すんなりと行かない”事情を抱えている。
そのため教養・品行レベルにあまりにも開きがある場合、我が子が小学校に入学した際、
母親が日本人であるということで大きく騒がれたり、歴史的背景の“攻撃”の矛先が我が子に向かう可能性も
全く否めないことはない。
(もちろん私自身も教養・品行レベルはこれからも上げていかなければならず、
中国の方々への一方的な話ではなく、さらにはいくら予防線を張ったところで「完全」はないことも
理解しているつもりである。これらはあくまでも「可能性が高い」という話である。)
これらのことも踏まえ、義両親や義弟夫婦のご意見も伺いながら 、夫婦で何度も話し合い、
最終的に学区房Cタイプを購入することに決めた。
決めてから家を購入するまで約1か月。
毎日のように不動産サイトで探し、気になる物件があれば連絡を取り、最終3つに絞った。
あとは価格と内見、家主さんとのやり取りの3点から考慮して決定した。
廃墟のような新居は、やはり40㎡未満。
そのため家族3人では到底暮らせず、また現在馴染んでいるこども園には通えない距離であるため、
貸し出すことにした。
そして今まで住んでいたマイホームは…。
売却を含め、賃貸物件探し&引っ越しのお話は次回にでも。