8月6日にFacebookで、『都挺好(=All IS WELL)』の視聴開始の投稿をしました。
蘇明玉を演じる姚晨さん、『非诚勿扰2』の時からのファン。
少し話は逸れますが、私はこういう強い感じの女性のお顔が好きなんです。
他には(余計なお世話ですが、整形前の)『色・戒』の頃の湯唯さんや馬伊琍さん。
また長男、蘇明哲を演じる高鑫さんは、『情深深雨蒙蒙』の陸爾豪。
あの頃の線の細い青年から、少し肉付きも良くなった中年に見事に変身。
この『都挺好』は、今年2019年3月1日から浙江TV、蘇州TVを皮切りに放映され
大きな話題を振りまいた作品で、今はYoutubeでもご覧いただけます。
今までも、いろんな方が感想をブログやツイッターなどで発表されており
記事を目にするたびに、ネタバレをしない程度に拝見していました。
そこで本日は私の感想、そして中国社会に関する観点を少し述べてみたいと思います。
まずドラマ全体の感想として、思わず夜更かしをしてまで見てしまうと言うほど、
趣深く、「一見の価値あり!」と思う作品だった。
特にご両親や、目上の方に対する接し方、話しかける言葉はどれもそのまま使え、
もっと早く見ておくべきだった、と反省した。
実生活で日本人同士なら、“ちょっとわざとらしくない?”と思う程の褒める表現を、
中国では日常的に言葉にし、それをサラッと声掛けに使っている。
例えば近所知り合いのおばさんに、道端で出会ったときは…、
「今日も一段とお若いですね。うわっ、その服とってもキレイで似合ってます!」
というような挨拶が繰り広げられる。
主人も例に違わず、聞いているこちらが思わず「ゾクッ」としてしまうような
言葉をご両親にかけている。例えば…
「いやぁ~、このお母さんが作った中華まん、世界一おいしいよ。さすがお母さん!」
「ほら、お父さん髭をそったら若々しい! きっと今日、たくさんの方に
振り向かれ、二度見されるはず!」という具合である。
特に母親には「マザコン?」と思うような、発言や行動も多々ある。
ちょうどドラマでは、次男である蘇明成が母親に接するようなシーンが当てはまる。
そういう文化なのだと納得できるようになったのは、
結婚して2周年を迎える頃だったなと、ドラマを見ながらふと思い出したりした。
また長男である蘇明哲が、ドラマの中でよく口にする「一家人嘛(=家族でしょ)」という言葉。
家族であるなら、例えば責任追及や金銭関連について、
そこまできっちりする必要がないと言う意味だが、
私からすれば「それまで全部、その一言で終わらせちゃう?」と思うこともあり、
正直少し苦手な言葉である。
父親である蘇大强のわがままも、ドラマとして脚色がついている部分もあるが、
「これとよく似たような事柄を、今まで何度も経験してるけど…」と
実体験と重なる部分がたくさんあったことは、ここだけの秘密にしておきたい(苦笑)
同時に見終わった後、どうもしっくりこない、
あまりピントの合った納得がいかないという、かなりもやっとした
“宙ぶらりん”の気持ちも隠し切れなかった。
(※以下、「透剧(=ネタバレ)」の内容を含みます。)
その原因とは?
娘である蘇明玉が衆誠グループの総経理(=社長)の座を辞めてまで
(師匠であるグループ会長は「休職」と言っていましたが、明玉の性格からすれば、
あの席には戻らないと…。)アルツハイマー病になった父親の面倒を見るという設定は、
かなり現実離れしおり、(ほぼ)あり得ないと思ったからだろう…。
実際、明玉の父親はドラマの設定では63歳。
平均寿命から考慮すれば、この先15~20年近くの介護生活が待っている。
私自身、曾祖父母の介護の手伝いを、学生時代にそれぞれ数年ずつ経験したが、
ドラマのような「親孝行」とキレイごとでは片付けられない程
いろんな問題が次々に発生し、私も家族も親戚も正直みんな疲れ果てた。
それをヘルパーさんや施設は利用せず、明玉と彼氏の二人だけで
面倒を見ると言うのは、正直設定に無理のあるのような気がした。
(そのため介護、老老介護を家庭でほぼ一人でされていらっしゃる方には、
本当に頭が下がる思いです。)
だたこれはやはり日本人的な考え方なのか、国内で先進的で大都市という北京であっても、
老人ホームの入居率は悪く、黒字経営なのは4%に過ぎないようである。
・北京の高齢者9割以上は自宅で老後 老人ホームの多くは赤字経営--人民網日本語版--人民日報
確かに中国は日本以上に、親孝行が重視される。
親孝行の表現方法は形をかえつつあるとはいえ、それでもやはり心のどこかに
「父母在不远游」と言う、「両親が健在の時はすぐに駆けつけられる距離でいること」
という伝統的な考え方が、特に「60後、70後(1960年、1970年代生まれ)」には残っている。
そのため長男の明哲はアメリカに居ることに苦悩し、上海単身赴任の仕事のオファーも
あっさりと受けたところがあるように感じた。
同時に、異なる見解も浮かんできた。
中国社会も急激な高齢化社会になり、さらにはその介護を支える世代が一人っ子
という時代が、もうそこまで来ている。
(一人っ子政策が実施されていたのが1979年~2015年、つまり今年41歳~4歳)
両家の親が同時に介護が必要になる…、親元を離れ大都市で奮闘している…など、
親不孝と思われても老人ホームへ送らざるを得ない状況も、
発生し始めているのではないだろうか?
また仕事やキャリアを理由に、自宅での介護の方をあきらめざるケースも
これから増加してくるのではないだろうか?
さらに生活費や子供の教育費などの支払いのストレスで、介護のため退職したくても
できづらい社会になってきているのではないだろうか?
・上海市に養老サービス・プラットフォームが開設--人民網日本語版--人民日報
現在、時代の変化と共に考え方も大きな変化を迎えている中国。
このドラマと通して、介護を含む「親孝行」のあり方を
もう一度考えさせようとしたのではないだろうか?
ここから先は、私の深読みであってほしいという希望もあるが、
このようにドラマになり、“その年代(これから介護が必要とされる)”の方々が
このドラマをご覧になることは、少し危険な香りもするような気がした。
つまりこの話はドラマと分かりつつも、どこかで「我が子も老後は面倒を見てくれるだろう」
「いや、見てくれないのは親不孝」という気持ちを、助長させないか
ハラハラしながら見ている私自身もいた。
私の実親が日本代表、義親が中国代表という訳では決してないが、
実親は「もし介護が必要になれば、すぐに老人ホームに入れて欲しい」と言うのに対し、
義親はマイホームを選ぶときも「この部屋があれば、老後が過ごせるし」と
自分たちが「ここ(=長男の家)」で過ごすことが前提だった。
中国では老人ホームはあるものの、まだまだ家庭で面倒を見るという意識が高く、
義両親に老人ホームに入居するかどうかを尋ねるのは、非常に失礼にあたると、
主人から釘を刺されている。
(老人ホームに入居している方のドキュメンタリーを見て、「子供の育て方が
悪かったんだな。親不孝な子供だな」と言う言葉を聞き、ご両親の見解と態度を
分かっているつもりである。)
主人は長男として「介護のため両親を引き取る」と、必ず申し出るだろうし
義弟夫婦は医師として、今の子育ても、両家のご両親にお願いする程忙しい時間を
過ごしているため、義両親の介護は私の肩にかかってくるであろう。
老人ホームだけでなく、ヘルパーさんを雇うことにもネガティブなご両親。
中国という異国、異文化で、私はご両親にとって満足のいく介護生活を、
送らせてあげられるのだろうか?
中国で出産するときも、大きな覚悟が必要であったが、
それ以上の覚悟をしなければならないなと、ドラマを通し私の置かれている状況を
改めて見つめ直した。
「もっと大きな人間にならなければ。」そう思わざるを得ない、ドラマであった。