先週木曜から、主人は北京に出張中。
週末は我が子を独り占めし、一緒に滑り台で遊んだり、団地の広場を走り回ったり…。
日曜日。気温はそれほど低くはなかったが、風が強く、体感温度はかなり肌寒い感じだった。
外で遊ぶこと約2時間、我が子が鼻水が出始めたため帰宅した。
いつもに比べ食欲がないことから、今夜熱が出なければいいがと思っていたが、
夜中2時頃、気になって我が子に触れるとかなり熱い。
体温計で熱を測ると、38.8度。「やっぱり」という思いだった。
一旦解熱を含んだ風邪薬を飲ませ様子を見ることに。
幸い薬が効いたのか30分ほどしたところで、スヤスヤと眠り始めてくれた。
明け方、午前中は、熱が一旦落ち着いた。しかしお昼ご飯を食べたあたりからまた38度台に。
そこでいつもお世話になっている、あの中医の幼児マッサージの先生に連絡をする。
実はこの王医師とは年間契約を結んでおり、通常の二十四節気前後3日間のマッサージの他に、
我が子の体に異常を感じた場合に連絡し、24時間体制で連絡が取れるようにしている。
(Wechatにメッセージを残しておけば、すぐに「指示」の返信してくれる)
今回もオンラインで折り返しの連絡をくれ、昼寝から起きたら連れてくるようにとの
メッセージをもらった。
診療所に到着。いつものように舌診から始まり、触診、脈診、腹診を経て、問診へと至る。
舌診をした時点で「ふん、ふん。なるほどね」と、おおよそ病状が分かったようだった。
ただご自身の診立てに過信をせず、触診、脈診、腹診をし、確認と言った感じで問診へと移る。
「大便はおそらく水っぽく、黄色がかってると思うんだけど、どうかな?」
「そうです。」
「昨夜熱がでて、一旦下がって、今また38度ぐらいだよね?」
「はい。一旦収まって、午前中は落ち着いていただんですが、またちょっと熱が出てきました。」
「おそらくこども園で風邪の菌をもらって来てて、昨日寒さにあたって抵抗力が低く
なったところで、菌に負けちゃったかな。この程度なら明日、明後日には熱は収まるはず。
心配には至らないので、お白湯をたくさん飲ませて、ゆっくり休ませてあげてください。」
そう言って、いつも通りマッサージをし始める。
普段はボディーローションを使って、肌のすべりをよくするのだが、この日は医療用の
低いアルコールを使っていた。
アルコールが蒸発する作用を利用し、皮膚から熱も一緒に蒸発させようという技法である。
マッサージをしてもらうこと約30分。王医師は相変わらずマッサージをしながら、
「うん、(熱が)下がってきたね」とのこと。
確かに額の熱さが、少し引いたように感じ、実際体温計で測ってみると37度前半になっていた。
毎回のことだが、我が子を私の膝の上に座らせマッサージを受けている間、
中医の知識も色々伝授してくれる。
- 大便が水っぽいのは、体内に「冷気」があるということ。簡単に言うと体が冷えているということ。その時水分摂取のためにと、常温以下の水を飲むことは、更に体を冷やしてしまうから、必ずぬるま湯を摂取するように。できれば1時間ごとに3度以上の割合で。排尿で「冷気」を排出させる手助けをすること。
- 鼻水も体内に「冷気」がある証拠。足湯をして体を温めること。足湯に生姜を擦って入れることにより、温もりが伝わりやすく、足湯が終わった後も温かさを保ちやすい。
- 発熱と言うと体を冷やさなければという思考になりやすいが、その原因になっている風邪は「冷気」。熱が出たからと言って、冷たいものを食べさせないこと。体が火照っているので気持ちよく感じるが、医学的にはお勧めしない。
- 夏のもの、例えばスイカ、きゅうり、茄子、トマト、それにバナナ、キウイなどは摂取しないこと。これも体を冷やしてしまう。逆に冬のもの、とくにカブやニンジンなどの土の中にできる根菜類がよい。
- 風邪を引いた時は、栄養をつけようと思ったりせず、とにかく消化の良いものを。消化の負担になる、弱っている体に余計に付加をかけるので、お粥、麺類ぐらいでよい。肉類、タマゴ類、海鮮類は避ける事。特に鶏系(チキン、鴨、アヒルなどのお肉や卵)は厳禁。咳を誘発させる。味付けも極力薄口で。
- 熱が下がって咳が出るのは、一種の浄化作用。また夜の睡眠時、明け方に咳がひどくなるのは、自然現象なので心配はいらない。睡眠によって体力が回復し、肺機能を正常に戻そうとしている証拠である。
そしてぬるま湯の摂取よりもさらに良いとして、今回教えてくれた「大根生姜湯」。
咳を静め、弱った胃を保護し体も温めてくれることから、1時間に最低3回、
咳をするごとに一口飲むと更に良いとのことだった。
※水300ml、大根5切れ、生姜3切れ。(お好みでどうぞ!)
火にかけること、約5分。
沸騰してきたところで火を止め、ひと肌になるまで冷まして飲む。
この際あまり煮立ててしまうと、生姜の辛さが出てしまうため、子供が飲む場合は
煮立てずに大根と生姜をマグカップに入れ、湯をかけても良いとの事。
ただ先に白状すると、お味は結構癖があり、我が子は一口飲んでNO!
(王医師曰く「子供が理性で飲める年齢になったから、今回伝えた」との意味がここで分かる)
私も実のところ、飲まなくて良いならば飲みたくない(笑)
まさに「良薬口に苦し」である。
これは医食同源の考え方にも通じるところがある。
基本臓器と同じ色の食材を食べると、その部分を保護する機能があると考えられている。
そのため肺(白色)=大根、心臓(赤色)=トマト、という具合である。
また排泄することで、体内の「冷気」も排出するのだが、食欲がなくあまり食べないこと
そして胃腸の働きが弱くなることから、排泄が滞る場合もよくある。
その場合は、「火龙果(=ドラゴンフルーツ)」が良い、ただこちらも体を冷やす
作用もあるので、たくさんは食べないようにとのこと。
日本ではドラゴンフルーツは手に入りにくい、という話をすると
「それじゃあ、蒸苹果(=蒸しリンゴ)」と教えてくれた。
この蒸しリンゴは消化を助けてくれるだけでなく、咳止め効果もあり、風邪を引いた時に
オススメである。
作り方は至ってシンプル。一口大に切っても良いし、皮をむいてそのまま丸ごと蒸しても良い。
いつも色んなお話をしてくれるのだが、今回王医師がマッサージの手を動かしながら、
つぶやいた話が心に残った。
「今の親は人間本来が持つ治癒力を、なかなか信じられず待てない。
もちろん自分も子を持つ親として、子供が苦しんでいる姿は見たくない。
けれど忘れてはいけないのは効き目が早いということは、副作用も強いと言うこと。
西洋医学を私は否定をしないし、中医では手に負えないこともある。」
(実際に以前、我が子が施術を受けている時、診療所に飛び込んできた親子がいた。
王医師はすぐに駆け寄り、脈拍と舌診、目の下の方を見て「すぐに病院へ」と指示を
したことがあった。)
「私は西洋医学と中医は、対立ではなく、補い合う関係だと思っている。
ただ今は、すぐに効果がみられる西洋医学が重視される傾向にあるが、薬も飲み続ければ
だんだん効きづらくなってくる。
『ここ一番』という時に、その薬の効力を最も引き出せるのは、日頃から体調管理に気を配り、
薬とは程遠い生活をすること。現代人は薬を『安心薬』として使いすぎている。
これを繰り返していると、いずれ人類の敵は薬となる日が来るのではと、密かに思っている。
もちろん杞憂であればいいのだが。」
この話を聞いた時、ふと以前読んだ本を思い出した。
異国での子育て、特に子供が乳児の時、一番心配だったのは「病気」だったからである。
この本のお陰もあって、我が子はほとんど病気をせずにここまで来てくれた。
また病気をしても、大事には至らずすぐに回復し、笑顔を見せてくれた。
私達親も、我が子が健康ですくすく育ってくれていることで、多くの心配と気苦労を
感じることなく、生活をさせてもらえたと感謝している。
月曜日に王医師の診療所に通い始めて、本日で3日目。
風邪の症状もかなり落ち着いてきた。
今日もいつも通りマッサージをしてもらいながら、中医の話を聞いた。
「『人は自然の摂理と共に生きること』が、体に一番負担をかけない。そのためには…」
このお話はまた次回、ゆっくりお伝えしたいと思う。