実母はとにかく子供に対する勘が鋭い人で、兄のバイク事故を前日に言い当て
大事に至らなかったり、私の病気を予測したりと、とにかく“スーパーマザー”だった。
好奇心から母親に尋ねると「毎日しっかり子供と向き合っていると、微妙の変化が
分かるようになるし、なんとなく子供に対する勘も鋭くなってくるものよ」との
解答だった。
先週金曜夕方、こども園にお迎えに行った際、いつものように走り回る我が子を見て、
「何かが違う」と感じ、なんとなく今晩あたり熱が出るのではと思っていた。
そして午後9時頃、赤い顔をし始めたと思うと一気に39度まで熱が上がってきた。
夜中は熱が下がっては上がり、上がっては下がりの繰り返し。
病院には土曜日朝5時頃、近くの総合病院に連れて行った。
その病院は小児科も急患で24時間体制。大事には至らず、泥遊びなどでしっかり手を洗わずに
指を口に入れたか、ご飯を食べたか、とにかく細菌性のものだとの判断だった。
そういえばこども園の農園で取った写真が、担任からWechatに送られていた。
こども園は年間2度の入園時期があり、3月がその1度。ここ数日新入園児の受け入れで
先生方はてんやわんや。以前のようにじっくり子供一人一人に向き合うのは難しい時期だ。
おそらく農園の授業で土いじりをした際、あるいは砂場で遊んだ時に、なんだかの形で
口に細菌が入ってしまったのだろう。子供にはよくある事だ。
土曜日午後、一旦熱は下がったものの夜になると38度台になったので、以前にもご紹介した
東洋医学の小儿推拿(=幼児マッサージ)に、日曜日の朝に訪れることにした。
基本こちらには、二十四節気の当日を含む前後3日間、つまり1か月に6回訪れ、
皮膚を刺激したり、ツボを押さえてもらうことで免疫力を高めてもらっている。
まずいつものように舌診から始まり、触診、脈診、腹診を経て問診へ。
舌と喉を見た時「上火了」とのこと。この“上火”は日本語にそのまま訳ができる言葉がなく
表現が非常に難しいが、「<中医>のぼせる。便秘または鼻腔・口腔などの炎症をさす」言葉。
或いは怒った時、辛い物を食べた時、よく眠れなかった時、胃腸の具合が悪い時など
「体の中に熱気があり、口内炎ができたり、体調が悪い状態」を指す。
最近瀋陽は乾燥している。こういう時も「上火」の状態になりやすい。
また熱を出す前日、こども園の滑り台がお気に入りでなかなか帰らず、抱きかかえて
帰宅したは良いが、ずっと大泣きをして怒り続けていた。これも「上火」の原因だろう。
「上火」になり免疫力が落ちたところに汚い手で触り、ばい菌が口内に入ったという
診立てだった。
診察中何度か出た咳の音を聞き、お腹の辺りを触診したあと、唇の色が赤過ぎると指摘をし、
「消化器官が疲労しているけれど、何か甘いものを食べさせたりした?」との質問を受けた。
病院でもらった薬が苦いのか、一口も飲まないので、少しアイスクリームに溶かした
と主人が伝えると、お叱りを受けることになる。
- アイスクリーム、チョコレートなどお菓子類、菓子パン、清涼飲料水はもちろん、糖分の多い果物類なども厳禁。
- 食事は白粥、あるいはうどんなど消化の良いものを。「栄養のあるものを」と肉や海鮮を食べさせるのは厳禁。消化器官の疲労を促進させるだけ
- 味付けは薄ければ薄いほど良い
- 鶏系(鶏肉、卵、アヒル肉、鴨肉、ピータン等)は、特に熱を体内に貯めやすいため、咳や鼻水が伴う時、「上火」の時は控える
- リンゴを蒸して食べさせる
- 1時間に最低3~5回は水分補給。最善は咳をするたびにお白湯を飲ませる
- お白湯は必ずひと肌~ぬるま湯程度。常温、冷温、高温は厳禁
- 咳が出るからとすぐに咳止めを飲ませるのではなく、とにかく水分補給をし、「熱気」を排出する。
- 排泄することで、体内の「熱気」を放出させる
- 夜中~明け方に咳が多く出るのは、肺機能を修復しようとしている証。快復の証でもあるため、それほど心配はいらない
- 痰の排出を促すために咳が出た時、手根部で背中の真ん中より上の部分を押し上げるように、下から上へと軽く叩く
医師の注意事項を聞きながら、頭と心の中で反省していた。
そういえば、卵粥を作って食べさせていた。
風邪などでも咳や鼻水を伴う場合は、消化器系が疲労していることが多く、まずは
その疲労を取り除いてやることが必要らしい。
しかし風邪などの場合、特に年配の方々は体力をつけさせなければとの考えから、
海老やミンチなどの肉、卵などを食べさせてしまう傾向がある。
咳や鼻水がある場合は、白粥あるいはうどん等の麺類に、白菜などを少し入れ、
いつもより軟らかめに煮たものを食べさせ、まずは消化器官を休ませる。
咳が収まったら肉や卵、海鮮類などを少しずつ摂取するのが良いらしい。
さすがに肉や海鮮は考えなかったが、鶏系が「上火」を促進するものとは知らず、
卵粥にしたのは、どうやらよくなかったようだ。
注意事項を話ながら、医師の手はひっきりなしに動いている。
皮膚などをマッサージしているからだ。
また今回は体内にこもった「熱気」を排出させるため、刮痧(かっさ)も行う。
通常は石や水牛の骨で作られたプレートを使って肌をこするのだが、幼児ということで
指でつまむ方法で行った。
刮痧(かっさ、Cassa)
2,500年もの歴史を持つ中国の民間療法で、石や水牛の骨で作られたプレートを使って肌をこすり、血液の流れをよくする方法のことを言います。
専用板を使用し、ツボをすったり皮膚をさすることで、血液中の毒や老廃物を押し出し、リンパや経路の流れを良くすることを目的としています。
かっさを行う効果には、小顔作用やリフトアップ、身体のむくみやデトックス効果が期待できます。
近年は、全身に使用する事が可能なため、かっさを利用したフェイシャルエステやリラクゼーションサロンなど、身近にサービスを受けられる店舗が増加中。血液だけでなく、水分や気の巡りが悪いと老廃物等が溜まりむくみやすくなったり、顔こりを起こしやすくなったりします。美容の一環として取り入れる方も増加しており、女性だけでなく男性にも広がりを見せています。
擦って赤くなるところが「痧(シャー)」と言われ毒素が貯まっている証拠である。
(※かっさ後の画像は、ビックリされる方もいらっしゃると思いますので省略します)
我が子も、特に肺の周りは「痧(シャー)」が出ていたが、かっさが効いたのか、
苦しそうな咳も少し収まってきた。
気管支のとおりをよくするため、気管分岐部のあたり遠赤外線で温めたりもしてもらい、
約1時間かけて施術が終了。
医師のアドバイスである消化のよい食べ物を食べ、今日は5日目のマッサージ。
発熱はしなくなりほぼ咳も収まり、様子を見るためにこども園は休んでいるが、
家の中で元気に遊ぶ姿をみて、やれやれと少し安心している。
西洋医学は効果が早いが、体への負担も大きい。
それに比べ東洋医学は効果が見えづらい部分も多く、胡散臭いと信じない方も少なくない。
しかし東洋医学の神髄は病を未然に防ぐことである。
今回も日頃から二十四節気ごとにマッサージをしてもらい、免疫力を高めていたからこそ、
大事に至らずに済んだのではないか、と思ったりしている。
日常生活の中でも、東洋医学の考え方は多く用いられている。
中国の病院には「中西医結合科」と言って西洋医学と東洋医学を融合した科があり、
このようにお互いの良いところを認め、受け入れ、足りないところは補う。
そんな生活を、私自身もしていきたいと思っている。