【前回のあらすじ】
就職の配属先である東京。社会人の一歩を踏み出す。
とにかくがむしゃらに働いた1年半後、突如内勤の人事異動。
入社の目的だった接客から離れ失意の日々を送るもつかの間。
新しい仕事で自分の居場所を確保し始める。しかしやはり心には大連理工大学の学生の
あの一言があった。そして退職を決意、留学の路に足を進める。
留学は語学研修ではなく、大学に入学した。
なぜなら日本の大学名にコンプレックスを抱き、それを上書きするためだ。
と言えば聞こえは良いが、実際の留学2年間はとにかく落ちこぼれだった。
成績はクラスで“安定”の最下位。
特にリスニングとスピーキングは壊滅的で、あまりものできなさに自分に苛立ち
情けなくなり、授業中悔し涙が自然と流れ落ち、先生を困らせてしまうこともあった。
留学2年生の時、担任から「もう年齢が年齢だし、これだけ中国語ができないのならば、
もうあきらめて日本に戻った方が良い」という提案を持ちかけられた。
確かに成績は相変わらず。それどころか「中国に居てこのレベル?」と言われる程だった。
しかし担任の提案に、「はい、そうですね」と言って日本に戻れるわけがない。
仕事も辞め、祖母と父親の反対を押し切り、当時の彼氏とも別れ、これで尻尾を巻いて
帰国してしまえば、本当に何もなしの負け犬27歳。
石に齧り付いてでも、絶対に“負けられない勝負”だった。
一方で努力をしても身につかないのであれば、ずるずると留学生活を続けるわけにもいかない。
どこかで見切りをつけなければならないと、当時のHSK8級に合格しなければ、
周りから負け犬と言われようと、誰に何と言われようとも帰国をして、新しい道を探すしかない
という覚悟を持って、中国語と向き合っていた。
寝ている時間以外は全て中国語習得の時間にあてた。まさに背水の陣だった。
(※話が少し逸れますが、せっかくの機会ですで中国語初級学習法について、経験談から少しだけお話ができればと思います。これから中国語を始めようとされていらっしゃる方。あるいは、初級レベルを突破されたいと思われていらっしゃる方の、何かのヒントになれば、とても幸いです。)
今思えば、2年間は中国語の学習方法を完全に間違っていた。
その原因は机にばかり張り付いて、とにかく書くことばかりに集中していたからだ。
もっと声に出し音読を繰り返したり、「何度も言ってもらうのは申し訳ないから」などと
遠慮などせずもっと中国の先生や学生たち、巷の方々にも話しをすればよかった。
また同じ「書く」でもディクテーション、特に初級の頃はピンインのディクテーション
をすれば、うまく書き取れない苦手な「音」に気が付けたはずだ。
うまく書き取れない「音」は、十中八九、発音が間違っている。
そのため集中的にその音の発音を矯正していけば、発音もきれいになってくる。
ピンインのディクテーションでも、きちんと聞き取れるようになってくる。
つまりピンインのディクテーションを繰り返すことにより、発音強化をすることも
可能である。
さらに発音の仕方に関しては、一番初めは「中国語発音学」をきちんと理解している
日本人の先生に「舌の位置と動かし方、口の形、息の出し方」など、
「“中国語の発音ができる舌と口”を作る手ほどき」を受けることが、キレイな発音が
できるようになる近道だと思う。
なぜなら日本人の中国語発音の先生はいわば“中国語の先輩”で、日本人の発音の難点も苦労も
ご自身が身を持って体験し、それを克服してきた人たちだからである。
大切な事なので繰り返すが、キレイな発音ができるというだけではなく、その発音
方法など「発音学」を心得ている先生を選ぶべきである。それは中国人講師にも
同様にして言えることである。
中にはやはり語学、とくに「音」や「発音」に関して、天才的で耳が非常によく、
ネイティブの発音を聞いただけですぐに真似ができる方もいらっしゃるのは、事実である。
歌手の方たちはその傾向が強い。言語は違うが松田聖子さんや、one ok rockのtakaさんの
英語には定評がある。さらに一度音を聞くと全て唄え、また伝説として語り継がれているが、
曲中の一音が半音高い(例えばソの音が、ソ#になっていた)事さえも、一度聞いた
だけで指摘した美空ひばりさんなども、彼女の英語や中国語は聴いたことはないが、
おそらくこの類であろう。
私は中国で中国語を学んだため、一番初めはとにかくネイティブ先生の見よう見まねで
発音をしていた。熱心に発音を繰り返してくださるネイティブ先生、生徒が間違えば
いち音ずつ正しい発音を発音してくださるネイティブの方々もたくさんいたのだが、
耳が良く真似が上手な生徒でなければ、基本正しい発音をネイティブに何度も
繰り返してもらったところで、自分のものにすることは難しい。
また「舌や口の周りの筋肉、息の使い方」を鍛えられていなければ、結局は自分なりの
発音になってしまい、その悪い癖が定着してしまうとなかなか矯正がしづらい。
そのため「中国語だから」と、中国語発音学の知識を何も持たず、やみくもに
音を繰り返させるだけのネイティブに、発音レッスンを受けることは、あまり(絶対に)
オススメしない。
発音の”下地”を作ってから、ネイティブの発音学を理解している先生にブラッシュアップを
していただいたり、中国人アナウンサーの真似をすることにより、発音がより
ネイティブらしくレベルアップでき、自分自身も楽に中国語の次のステップに進める
そう考える。
現在はオンラインレッスンが便利な時代になり、言い方は悪いが誰でも「中国語講師」の
看板を掲げることができる時代になった。
それ故に、企業側や講師側も値段競争に走りやすくなった。
お手頃価格のレッスンが全てNGだとは全く思っていないが、こちら側(生徒側)も
講師のレベルを図る必要があると思っている。
発音に関しては、舌の位置や口の動かし方、息の出し方などを、きちんと説明できない
発音講師は、いくら値段が安くても避けられた方がベターである。変な癖が付いてから
矯正する方が、数倍高い授業料になることは覚悟していただきたい。
(あくまでも今回の言及は「発音」に関してのことで、目的が違えば結果は異なる)
私の尊敬する岡本悠馬さん。以前無料で「中国語発音レッスン生中継」を開かれた。
生徒さんの発音矯正時に、きちんと舌の位置などをご説明されている。
中国語発音レッスン生中継 第1回 その1 - 岡本悠馬 (@yuma_okamoto) - TwitCasting
中国語発音レッスン生中継 第1回 その2 - 岡本悠馬 (@yuma_okamoto) - TwitCasting
中国語発音レッスン生中継 第2回(vinoさん編) - 岡本悠馬 (@yuma_okamoto) - TwitCasting
中国語発音レッスン生中継 第3回 - 岡本悠馬 (@yuma_okamoto) - TwitCasting
中国語発音レッスン生中継 第4回 - 岡本悠馬 (@yuma_okamoto) - TwitCasting
また日本人でありながら、中国語発音矯正に確かな技術と実績をお持ちの先生方々。
このお三方は、お互い切磋琢磨され常に向上心をお持ちである。
井田綾さん、熊澤みどりさんも、岡本さんと同じように私はとても尊敬している。
こんな先生方に入門の時に出会えていれば、中国語の道も今よりは歩きやすかったと
思えてならない。
- 岡本悠馬 先生
- 井田綾 先生
- 熊澤みどり 先生
また井田綾さんと、熊澤みどりさんはお二人で「音読会」を開催されている。
中国語を高められるのはもちろんのこと、中国語学習に取り組む同志にも出会える
貴重な場でもある。ご興味がある方は、ぜひ一度チェックしていただきたい。
また3月2日(土)に音読会が開催され、すでに音読枠は満席のようだがリスナー枠は
まだ受け付けているようなので、ぜひこの機会に、他の中国語学習者の音読を
聞いてみられることをオススメしたい。
3月の〈玲瓏りんろん〉音読お茶会は土曜開催です!
— 小桜(IDA Aya) (@aida0627) 2019年2月15日
受付開始したらお知らせメールだけで満席になりましたので、リスナー枠だけ少し増席しました。どうぞお越しくださいませ。https://t.co/mx1A8RyFOI
さて、話は自叙伝に戻そう。背水の陣で中国語学習に臨んでいた私。
石に齧り付いてもという、そんな思いが届いたのか、留学3年生の担任に出会い、
中国語が一気に花咲いた。
さらにもともと分析などが好きな私。3年生時の中国語文法の授業にもどっぷりはまり、
それまで修行のような中国語学習が、とにかく楽しくて仕方なかった。
3年生の前期、成績トップ10の貼り出しを見て、私が一番ビックリした。
なんと全学年3位。腰が抜けるという出来事を、実際に体験した。
成績だけでなく、巷に出ても言葉がスラスラと出てくるようになった。
そのため、少し気持ちにもゆとりができた。
そこで0ベースで中国に留学する方の気持ちや、落ちこぼれ学生の気持ちが分かること、
さらに「漢語教学(中国語の教授)」を専攻していることもあり、中国に来られた
ばかりの日本人留学生向けに、中国語の個人レッスンをし始めた。
日本の大学時代にワープロ講師を経験し、すっかり「講師」という職業に取りつかれた私。
いずれは「講師」の道をと思っていた私。
職種は違えど、思い描いていた未来が少し近づいた気がして、感慨深かった。
授業の準備などは大変だったが、教えることでより中国語も理解ができた。
とにかく中国語が楽しくて仕方なかった。
その後卒業時までトップ10を維持でき、優秀留学生賞と優秀卒業論文賞を受賞した。
受賞を受け、人生最大の勘違いをする。俗にいう「自信過剰」というものだ。
しかしこの行動が「中国語の種をまく」という私の夢に、一気に近づくことになる。
その行動とは?
(次回に続く…。さて明日はいよいよ最終回。こうご期待!)