中国にゆかりのある「人と人」「人と情報」をつなげたいという熱い思いから
始まった企画。その名も「情熱中国」。
(※決してパクリなどはしておりません。もとが良いので敬意を表し、少々拝借しているだけです。)
第8回目のゲストは、中国語発音矯正講師、中国語発音指導法講師である井田綾さん。
中国語の発音が気になるなら「りんず中国語ラボ」でクセ改善を
中国語をある程度マスターしたという方でも、発音に関する悩みは尽きないものです。中国語には独特の発音法があり、学習者一人一人もそれぞれ異なるクセを持っていることがほとんどです。中国語の発音に悩んでいる方は、りんず中国語ラボの講座をご利用ください。
スマホやパソコンがあれば、どこからでも利用できる、オンラインのプライベートレッスンをおこなっており、個々の受講生のスキルと目標に合わせた内容を提供しています。通訳として働きたい、仕事で中国語を使っているといった方も、適切な発音チェックを行い、矯正が必要な個所を明確にできるりんず中国語ラボをご利用ください。
情熱中国(8-1)【井田綾さん・中国語発音矯正、中国語発音指導法講師】
情熱中国(8-2)【井田綾さん・中国語発音矯正、中国語発音指導法講師】
それでは昨日の第2部に引き続き、井田綾さんの中国語発音についての熱い思いを
ぜひ感じ取っていただきたい。
天才的なその先生の励ましとご評価を受け、「中国語発音矯正講師」という看板を自信をもって掲げられたのですね。
始めは恐る恐るでしたが、受講生さんに授業をしながら、「どの発音を直せばいいか?」「優先的に直さなければいけないところはどこか?」「こう言えば直せる」というようなことが、どんどん見えるようになりました。私はこの仕事に向いている、と確信を抱くようになりました。
レッスンの最初の頃は「何月何日、次回のレッスンでお会いしましょう」という、授業に重点を置くスタイルでしたが、ある段階から自宅学習に重点を置くように変わりました。
「自宅学習」というのは、音読音源の提出のことですか?
おっしゃる通りです。その模索過程で、非ネイティブ学習者の発音矯正のゴールが、だんだんと見えてきました。
「非ネイティブ学習者のゴール」。それはどんなゴールですか?
まず講師から指摘された発音について、自分の録音を聞いた時に「本当にそうだな」と納得し、理解ができるようになるのが第一段階です。
次に指摘を受けた発音を修正できるようになるのが、第二段階です。
さらに講師の指摘を受けなくとも、自分の録音を聞き、改善ポイントが分かるようになるのが第三段階。
そして最後の第四段階は、今から話す発音は自分が苦手な音だからと準備をして話せる。これが発音矯正のゴールだと思います。
「自分で発音の間違いに気が付き、修正することができること」という目標を、お手伝いするために私はメニューを組み、レッスン開始時から意識付けをして差し上げようということに方針が固まりました。
もともとお持ちだった考えに、受講生の方々の“スパイス”が加わり、綾さんのレッスンが完成していったのですね。
そうですね。サポート方式については、モニターさんや受講生さんとのやり取りの中で、だんだん方向性が見え、育てていただいたと思っています。
発音指導については、この受講生さんに何を言うべきかを迷ったことはないんです。私にとって発音矯正は大変なことではなく、自然にできることなんです。
メルマガなどでも幼い頃、構音障害だったことをお話されていらっしゃいますが、発音指導と関係があると思われますか?
注意深く人の発音を聞くように耳が方向付けされている理由は、ひょっとすれば幼い頃、構音障害だったことが関係あるかも知れません。ただ、構音障害のある方みなさんが、ご自身の構音障害に気づいていらっしゃるかと言えばそうではなく、全く気にされていない方もいらっしゃいます。「この方も、私と同じ癖があるな」と分かる方の中でも、個性だと思っていらっしゃる方、周りもご本人さえも気づいていない方が多くいらっしゃいます。
確かに構音障害だからこそ耳が育ったということもあるかも知れませんが、逆に言えばもともと聞き分けられる耳があったからこそ、私自身が構音障害であることを自覚していたのかもしれません。
「聞こえる耳」をお持ちの綾さんが「日本語の干渉を受けているな、日本人が苦手だな」という音はありますか?
言語に関わらず、母音は干渉を受けやすいと思います。「あ」という音が日本語にあるからこそ、中国語の「a」の正しい発音ができないということがよくあります。
日本人という話からは少し逸れますが、以前英語ネイティブのアメリカの方に中国語を教えた経験があります。その際中国語の「a」が、appleの「æ」になり、どうしても舌が上がってしまい、母語の干渉を受けているなと感じました。
私も中国語の「a」は舌が上がりやすく、また口の開き方が小さく、日本語の「あ」の発音になってしまいます。「m」や無気音の「d」など息のためを作りづらいと感じています。
無気音の発音は意外と難しく、濁音になってしまう方が多く見受けられます。
私に最初に発音を教えてくださった先生は発音を教えるのがお上手で、クラスメイトはみな上手な発音を身につけました。その後、別なスクールに通ったところ受講生の多くが無気音を濁音で発音していて驚いたことがあります。また、先生方も特に指導なさらず、そのままになっていることに戸惑いました。
無気音の説明を、濁音で書いているようなテキストもたくさん見かけますよね。
う~ん、しょうがないですよね。
学習者側が、発音習得を急いでしまうのだと思います。ピンインとカタカナの対照表があれば、覚えやすいですからね。また独習書を購入して独学される方も多く、そのため本もカタカナで書かざるを得ないのかもしれません。
確かに巷では「これだけでマスター」というようなうたい文句も良く見かけます。習得を急いでしまう。確かにそうですね。私自身も今でこそですが、留学当時はとにかく習得を焦っていました。耳の痛いお話です。
綾さんのレッスンの受講者さんで、0から発音を学ばれた方はいらっしゃいますか?
教授法の講座を作成しようと思い、教え方の検証や効果の測定をするために、昨年お一人にゼロから発音レッスンを体験していただきました。その方にはカタカナは使わず、口の形や舌の位置の説明で発音の仕方を覚えていただきました。結果、とてもキレイな発音を習得されました。最初はレッスン頻度を密にし、集中して学習する期間が必要です。そうすればピンインからの説明で習得していただけます。
発音は言語の基礎中の基礎ですし、0からの場合は始めの短期集中が効果的で、後からその効果が特に目に見えて分かってきますよね。ちなみにレッスンの頻度は、どのぐらいでしたか?
週2回のレッスンで10週間、つまり2か月半でピンイン付きで短文を読めるようになりました。だた、発音の定着はまだまだしていません。
初心者の段階では、講師の発音をリピートするときはキレイな発音ですが、自分一人で発音すると声調が狂う、母音子音や注意事項を忘れることは、よくあります。でも講師が適切に導いてあげられる環境があれば、継続的に修正することができます。それを繰り返していれば、正しい発音は定着してきます。そのため初心者はまずはピンインを読めること。そして聞いた音のピンインが書けるというトレーニングが大切です。聞いた音のピンインが書き取れれば、辞書が引けます。そのため、まずは全てのピンインを読めることを優先します。
なるほど。確かにピンインが読めなければその次の手が打ちづらいですね。
それでは初級の方、中上級の方のレッスンはいかがですか?
先程お話させていただいた小松京子さんは、25年前に中国語を学ばれました。そのためピンインの読みはおぼろげになり、消えるoやeもご存知ではありませんでした。そのためレッスンではまずは、読み方を教えるところから始めました。
ピンインの読み方自体が分かっている方には、すぐに発音矯正から始めていただきます。
ゼロから発音を始められる方はもちろんのこと、発音矯正をしたい!と思われた方はぜひ、りんずプロダクションの門を叩いていただきたいと思います。
まさに「発音にピンときたら、『りんず中国語ラボ』まで!」ですね(笑)
そうですね(笑)
私自身発音に満足しておらず、主人が中国人ということで、質問をすることがあります。しかし主人は中国語教育を学んだわけではないため、音を可視化できず、「発音が違う」と言うだけで具体的な発音方法の説明がなく、ひたすら真似をさせて終わりです。発音をよくしてあげたいというその気持ちは、もちろんとてもありがたいです。ただ聞いた音をすぐに音にできる方ならその方法でいいかもしれませんが、私は正直それでは分からず、余計に混乱し、夫婦けんかに発展したこともありました(笑)。
自分の発音はどこが間違っているのか、舌の位置や口の形はどのようにすれば正確な音が出るのかを、日本語で詳細にわたり説明できることが、日本人のできる発音指導なのかなと思います。
たとえば、私は日本語教育法を学習したことがないため、日本語について質問されても答えられない、というのと同じですよね。発音という見えないものを、いかに可視化できるか、それが講師かインフォーマントかの分かれ道だと思います。
おっしゃる通りだと思います。
それでは私もよく参加させていただく、中国語の音とリズムを楽しむ音読サークル〈 玲瓏りんろん 〉の『音読会』ですが、こちらの会はどんな思いから開催しようと思われたのですか?
発音矯正レッスンを受講される受講生さんの他にも、対象を広くし、社会貢献がしたいという思いから始めました。この6月からは参加費500円を頂戴しておりますが、多くの方々から「そんな低価格設定はもったいない、もっと価値があるのに」というお声をいただいております。この価格設定にしているのは、私の初志が社会貢献だったからです。
また音読好きの仲間が欲しい、そしてその仲間が集まり「音読って楽しいよね」と言い合える場所が提供できればという思いもありました。ビジネスとして「発音を教えている先生」という肩書の他に、「発音を愛している人」というパーソナリティ、ビジネスもする一方で、純粋に音読を楽しみたいという立場を積極的に表明したかったことも開催理由の一つです。
さらには、普段はなかなか自分自身のブラッシュアップに時間を割けない現状を打破すべく、聞いていただくという場を作れば精進するだろうと思ったのも、始めた動機の一つです。
音読会を始められてから約1年半が経過しましたが、音読会への思いに変化はありましたか?
みなさんが本当に喜んでくださり、開催して良かったなぁと心から思います。ご参加いただいた方々からは、「普段中国語について語る場がなく残念な思いをしていましたが、今日は思いっきり話すことができ楽しかったです」「今までは教科書通りの音読方法しか念頭にありませんでしたが、皆さんのいろいろな発想に触れ刺激を受けました」というようなお声を頂戴し、お役に立てたと思え非常に嬉しいです。またこの1年半で、私自身の発音もよくなったと思います。
綾さんもまだまだ進化されていらっしゃるのですね。
こちらの会は熊澤みどりさんとの共同開催ですが、2人でご相談されて音読会をご企画されたのですか?
音読会をやろうと思いつき、みどりさんをお誘いしました。
それまで私の周りには、非ネイティブの日本人で発音矯正を看板に掲げていらっしゃる方がいらっしゃいませんでした。そのためみどりさんに出逢ったとき、初めて仲間が目の前に現れたと、気持ちが高ぶりました。
もしみどりさんがいらっしゃらず、音読会を一人で始めていたならば、もっと勇気が必要だったと思います。第1回目の音読会は二人ともすこぶる緊張し、会が終わった後の反省会が1時間かかる程でした。しかし最近では「今日も楽しかったね、またね」で終わるほど、楽しんでいる私がいます。1年過ぎた頃に分かったことは、みどりさんと私とでは発音に関する得意分野が全く違い、実はとても良いコンビだったということです。
私も素敵なコンビだと思って拝見しております。私の綾さんとの出会いは音読からでしたので、音読に対する情熱はよく存じ上げております。それを踏まえブログなどを拝見しますと、音読と同じぐらい翻訳に対しても情熱を注いでいらっしゃるように感じております。
私は割ときれいごとを言うタイプなのですが、本気でそう思っているのでお話します。
外国語のおもしろさは、やはり全く異なる言葉を話している人同士が、言葉さえわかれば意思疎通ができる、つまり道具として言葉が存在するところだと思います。高校2年で韓国旅行の機会に恵まれ、初めてハングルに触れました。英語は学校で習うこともあって珍しさを感じませんが、ハングルは見たこともない文字です。そのため旅行前に本を購入し少し勉強してみると、「가、오、사」など、ハングル半切表を読めるようになりました。意味は分からないけれど音を読むことができるという経験が、「外国語ってとても面白い!」と感じることにつながりました。また外国語は勉強さえすれば、分かるようになるということにも気が付きました。中国語との付き合いがずっと続いてきたのも、この感覚が好きだからこそなのかもしれません。
ハングルが読めるようになったということが、外国語という面白さをしるきっかけだったのですね。
同じように、翻訳者がきちんと仕事をすれば、中国語が分からない方にも、中国語で書かれている本の内容を伝えてあげられる、同じ情報を届けることができるということ自体に、とても心惹かれます。
先程もお話しましたが、博士課程を出たにもかかわらず研究者の道ではなく、違う道を歩もうと思った理由は、翻訳と中国語講師をやろうと思ったからです。翻訳の勉強を始めた時、多少日本語が上手く、中日翻訳を褒めていただきました。翻訳の勉強自体がとても楽しく感じましたし、また翻訳者になるために、中国語のことをもっとよく理解しなければとインプットにつとめました。その念願が花開き、産業翻訳を受注することができるようになりました。
(第4部につづく)
情熱中国(8-1)【井田綾さん・中国語発音矯正、中国語発音指導法講師】
情熱中国(8-2)【井田綾さん・中国語発音矯正、中国語発音指導法講師】
今後も中国(あるいは中国関連)で奮闘される方を取材、あるいはインタビューをし、「人と人」「人と情報」をつなげたいという理念のもと、有益な情報を皆さんにも共有していただけるような、そんな企画になればと思っております。
ある日突然、インタビュー依頼のご連絡が届いた方には、ぜひ今お持ちの専門性、独自性、影響力等の非常に価値のある情報やご経験、熱い思いを、存分にお伝えいただければと存じます。また逆に中国、あるいは中国語で「こんなことを知ってほしい、こんなことを伝えたい」という情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報いただければ、取材やインタビューをさせていただきたいと思います。
これからもこの企画をはじめ、ブログをご愛読いただければ幸いです。