「事件は“会議室”で起きてるんじゃない、“現場”で起きているんだ!!!」
1998年に放映された、織田裕二さん扮する青島刑事が、こう叫び話題を呼んだ映画
ただ私自身が中国で働いた経験、主人や友人を見ていると、中国の場合はこうである。
「商談は“会議室”で起きてるんじゃない、“宴会の席”で起きてるんだ!!!」
つまり中国人と付き合う場合、絶対に外せない食事の席。
会議室ではの商談は形式的なもので、
実際には食事、特にお酒の席で執り行われていることが多い。
そこを勘違いしている日本ビジネスマンの口からは、
「会議室ではあんなに乗る気だったのに、商談が終わり、食事に行った次の日に
断られてしまったんだよね。どうなってんだよ!」と愚痴や怒りを何度聞いたことか。
そこで本日はビジネスおける食事やお酒の席での心得、ならびに
今日から使えるマナーとして、「誰もが知っておきたい基礎編」を紹介したいと思う。
もちろんこれらは中国人の友人や、そのご家族との食事でも役立つ知識として、
ぜひご覧いただきたい!
“杯”を飲み“干”すと書いて 「干杯(=乾杯)」。
つまり中国人にとって乾杯とはグラスのお酒を一気に飲み干し、空にすること。
日本人のように、グラスに口をあて、チビリと一口飲んでいるようでは、
「こいつは私のことを大事に思ってくれていない」と
本来ならまとまる商談もご和算に。
女性でどうしても飲めない方は、お酒の代わりにお茶やジュースで、せめて一杯目は
グイグイと飲み干すと、相手から「いいね!」と称賛を受けることも。
お酒がさらに入り、勢いが増してくると「 干!(飲み干せ!)」と
乾杯の応酬にあうことも。
そんな時はグイグイとグラスのお酒を飲み干し、グラスをひっくり返し
空になったアピールを!
最近は「随意(=ご自分のペースで)」と言ってくれる場合も出てきたが、
「随意」はあくまでも男性が女性に対しての、「ジェントルマン」的な対応。
男性同士、特に東北地方の方とグラスを交わす場合は、100%乾杯と心して臨むべき。
でないと、私は占い師ではないが「後悔しているあなたが見えます」。
ちなみに男女問わず東北地方の方は、お酒に強い人が多いので、
式典のような多くの人が集うような場所では、少しばかり距離を置き
頃を見計らってお酒を交わしに行くのも作戦の一つ、かも。
(小細工が通用しないほど、強い方もいるのも事実!)
大人数の接待は8人掛けの「八仙卓子」という、大きな円卓で食事をすることが多い。
10人掛け、12人掛けぐらいまでは良しとされるが、必ず偶数にすることが
基本マナーである。
着席したあと、みんなで乾杯。
しかし乾杯でグラスを合わせようとしても、向かい側の方は遠すぎて
手が届かない・・・。
そんな時は席を移動して、グラスを合わせに行くようなことはせず、
コップを円卓の上で「コンコン」と叩くことで乾杯の意味を表す。
「ガンガン」と大きな音で、自分の嬉しい感情を表現したり、存在感をアピール!
なんてことも中には少数派であるようだが、円卓の回る部分はガラス製。
決して割ったりされないように(笑)
乾杯をする際 、日本人がつい見落としがちなのが、カチンと合わすグラスの高さ。
「高さ」によって、地位の高さや年齢を表すので気をつけたい。
つまりビジネスでは、新入社員がおのずと一番低い位置で乾杯することになる。
「私なんて、そんなそんな・・・」とグラスの低さ争いが起こり、
お互いが我先にと、下へ、さらに下へとグラスを合わせていく。
また自分が明らかに上でない限り、下へと争い合うのは一種の謙遜も表わす。
相手にグラスを持ち上げられたりと、いつまでたっても乾杯できないなど
笑いが起こる場面でもある。
相手の地位が分からない時は、とにかく相手より下でグラスを合わす方が無難。
でも「じゃあ、地上すれすれで!」なんて、お笑いのようなことはされないように!
ジミーちゃんこと、ジミー大西さんはご経験があるようだが(笑)
日本でお酒を自分で手尺するのはタブーだが、
中国は「自分のお酒は自分で注ぐ」のが一般的だ。
ただ、相手が自分で注いでいるようであれば、その接待は失敗である。
また基本お酒は一人では飲まず、飲みたければ誰かを誘って飲むべきである。
その時はグラスを合わせ「乾杯」(あるいは「随意」)と言って飲み始める。
相手のグラスが空になれば、すかさず注ぎいれるのがマナー。
さらに自分のグラスに注ぐ前に、まずは相手のグラスに注いでから。
相手が自分で注ごうとしているならば、その瓶を奪い取ってでも
相手のグラスに注がなければならない。
相手に注ごうとする自分と、自分で注ごうとする相手。
お酒の瓶を奪ったり、奪われたり。
注ごうとして相手に瓶を奪われたら、「いやいやいや」と奪い返していただきたい。
また基本は「乾杯」をするので、グラスにお酒が残ることは少ないが
グラスを空にしてから、新たに注ぐのが良しとされる。
そのため相手のグラスにお酒が残っていたら、自分もグラスを持ち「乾杯」と言って
お互いグラスのお酒を飲み干したあと、相手のグラスに注ぐようにする。
もちろんその後、注ぎ返され、乾杯コールが入るのは覚悟の上で。
ちなみに自分のグラスは机に置いて、瓶は両手で持って注ぐこと。
時には臨機応変に片手瓶、片手グラスも必要だが・・・。
お酒でも、お茶でも相手に注いだ後、指2本で「トントン」と机をたたく場面に
遭遇したことはないだろうか?
これは注いでくれたことへの感謝の意味。
元々は宮廷でひざまついて、お礼を言う姿から来たそうだ。
人差し指と中指の2本を使うことが多いが、人差し指だけの1本でも同じ意味。
軽い会釈も日本人らしいといえばらしいが、郷に入れば郷に従えで、
次回からはこちらを使ってみてはいかがだろうか?
ちなみに間違ってノックの様に机をたたいても
「は?」となって終わるので、ご注意を(笑)
みなさんもご存じ、「白」とは茅台酒(マオタイ酒)を代表するような白酒のこと。
こちらかなりのアルコール度数も53度というものもある。
しかも白酒の中でも最高級品の一つと言われ、目が飛び出すほど高いものもある。
たとえばこちら。
化粧箱に入れられているだけあり、なんとお値段は17288元(≒27万2000円)
ただ習近平国家主席に政権が代わってから、賄賂の取り締まりが厳しくなり
お酒の席が賄賂多発機会となること、またこれら高級なお酒を贈ることも
一種の賄賂とあり高級なお酒が好まれず、売り上げもガタ落ちである。
また最近の若者で、特に南方地方の方は飲まない方も多く、
今までお酒とタバコは手放せなかった中国社会も、だんだん様変わりしてきた。
様変わりの一つと言えば、10年程前からワインが好まれ始めたことも挙げられるだろう。
中国は広大で、地域によって好みのお酒の種類が異なる。
北方地域、特に東北地方の人たちは、お酒に強いこともあり「白酒」を好む傾向がある。
しかしここ瀋陽に限っては、ビールであることも触れておきたい。
普通のレストランで(朝から)ラッパ飲みで、何十本とビールを飲んでいる人たちを
見かけることも少なくない。
日本のテーブルマナーに席順、上座・下座 があるように、中国にもマナーがある。
円卓の基本スタイルは上記のもので、入口からもっとも離れた席が上座となり、
入口に近づくにつれて下座となっていく。
中国の宴会の席次は、西洋の場合とちょうど正反対である。
西洋では主人側の座席に近いほど位が高いが、中国では主人側の座席に遠いほど、
位が高くなっている。いうなれば西洋では親しさを、中国では礼節を重んじる。
また北の奥の位置が両首座(主客)となり、次に東側を第一座、西側を第二座とし
入口を背にして主客と相対する席が、主人の座る席になる。
部屋の入口によっては必ずしもそうならないので、
入口から一番遠い席を主客席とし、案内すればよい。
中国の礼節もだんだん曖昧になりつつあるが、教養やマナーがある人として
見られるには、いつから食べ始めるかも知っておきたいマナーの1つである。
主客という場合が多いが、そのテーブルで一番重んじられる人が
箸を持ち上げ料理に触れるまで、その他の人たちは箸も持たずに待つのがふさわしい。
接待の席では第一主客が、春節などの親戚の集まりでは最長老の方となる。
「食事は出されたらすぐ食べたい!」と、いの一番でご飯にありつきたい方は、
早く出世されるか、それがダメなら、長寿を目指していただきたい(笑)
日本は箸を横置きするが、中国は縦置きし、レンゲと並べておくことが多い。
また和食では箸を反対向きにして、大皿から小皿へ取り分けることが多いが、
中国ではNG。また席を立って料理を取ることもマナー違反。必ず座って料理を取る。
料理を取り分けるときも、食べるときも、取り皿は一切手に持たない。
手で持ち上げてよいものは、レンゲ、箸、グラス、茶碗のみ。
日本人の習慣で、どうしてもお皿を持ち上げたくなったときは、
代わりに相手の気分を持ち上げて!
もちろん、取り皿を持ち上げて、かき込むように食べるのはマナー違反。
円卓は時計回りが基本。回す速さにも気を付けて!
最初に料理を取る順番が回ってきたら、他の人の分が足らなくならないように
人数のバランスを考慮して取り分ける。
また酔ってくると力の加減が分からず、円卓を力強く回す方もでてくる。
何気なく置いたグラスやスープの器、お酒の瓶などが
回された円卓に当たってひっくり返ることもあるので、置く場所には配慮して!
日本ではご飯を残すのは礼儀知らず。
料理を作ってくれた人、運送者、生産者・・・、ここの食卓に届くまで
携わった全ての方への感謝をこめて、食べきるのがマナー。
しかし中国は「出された料理食べきる=出された料理が少ない」と
おもてなしが足りない!という不満の意味になるので、必ず少量でも残すこと。
ただ最近、とくに上海をはじめ南方地方では「もったいない」と言う感覚が浸透し始め
食べ切れる分だけ注文する、という現象も。
周りの様子をみながら、微調整はしつつ、中国人の基本精神は
「食べきれないほどのおもてなし」ということを、頭に置いておかれた方がベター。
中国人と言うととても範囲が広く、私の生活している東北地方と範囲を狭めるが
東北人のお酒の飲み方は、白か黒。つまり「飲む」か「飲めない」か。
下戸なのに、「せっかくすすめてくれたんだし、一杯(一口)だけ」と、
日本人特有の譲歩の美徳から、コップに口をつけようものならば、
今までは遠慮していたんだと言わんばかりに、乾杯攻めに。
どうか、病院送りは覚悟の上で。
少しぐらい飲める程度ならば、「飲めない」で押し通した方が身のためである。
中国のビジネスは会議室ではなく、接待、つまりレストランで
進んでいく、あるいは「おおよそ決まる」といっても過言ではない 。
お酒を飲ませて、相手の本心を見抜き、ビジネスを有利に持っていく。
そのため、もし日本から一人で中国に出張で来られるならば
相手は複数人でお酒を飲ませに来るので、その攻撃をどのようにかわすかを
あらかじめシュミレーションしておくことをお勧めする。
またお酒が弱く、取引先のキーマンにどう見ても勝ち目がないなら、
現地社員と協力してリレー方式で飲み交わすのも、大いに有効な戦略と言える。
少し余談になるが、私が上海で就職していたときのこと。
取引先の中国人社長から「飲んだ杯数分だけ、契約金額を上げてやる」と言われ、
テーブルにあったお酒を、片っ端から飲んだ私。
最後に社長から「もう勘弁!」と言われた武勇伝(?)を持っていたのは、
もう遠い昔・・・。
それほどお酒の席での一言一言が、すっかりそのままビジネスに結びつのも
ここ中国では、雨の日には傘をさすほど、当たり前のことである。
また日本では「お酒の席は無礼講」と言われることもあるが、中国は全く通用しない。
例え相手がそう口にしようとも、それはあくまで建前の話。
お酒にだらしのない人として、不合格のレッテルを張られることに。
そのため、まずはお酒で酔わされないことが、食卓商談の大前提である。
ただ一つ注意したいのは、特に東北地方では友人同士では吐いてしまうほど飲むと
「够意思(=友達がいがある、友情に厚い)」と思ってくれることも。
とは言えやはり、「酔った勢いでいらぬことまで、口ばしっちゃって」と
ならないためにも、酔ったふりができることも身を助けるのは確か!
今日は食事マナーの基本も基本、超基本部分を取り上げてみた。
中国ではこれら食事の席のマナーに関しては、山東省あたりが
一番重んじられていると耳にしたことがある。
今日取り上げたのはごく一般的なマナーで、地域によっては多少異なることもあるため
分からない場合は勝手に振る舞わず、必ず現地の方に尋ねられることをお勧めする。
マナーを重んじることは、相手を尊重すること。
少しの心遣いで、きっと食事の席もさらに楽しくなるはず!