ちゃーちゃん@中国

中国滞在10年以上の日本人女性から見える「生の中国」とは?



あなたの目には、中国はどのように映っていますか?

あなたが本当に知りたいことはなんですか?

影響力等は決してないですが、日本人と中国人の誤解が少しでも解ければと思って始めたブログです。



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情熱中国(3-2)【後藤ゆかりさん・中国語通訳(司法、その他全般)】

中国にゆかりのある「人と人」「人と情報」をつなげたいと、先月から新企画として

稼働し始めた「情熱中国」

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(※決してパクリなどはしておりません。もとが良いので、敬意を表し、少々拝借しているだけです。)

 

昨日に引き続き、第3回目のゲストはフリーランス通訳の、後藤ゆかりさん。

 検察庁や警察での取り調べ、裁判所での法廷通訳など司法通訳を中心にフリーで中国語の通訳をしています。
 商談・視察団訪日・司会・レセプション・テーブル通訳、観光や買い物の同行、海外出張への同行などにも対応いたします。
 個人・法人を問わず、通訳を必要とされる皆様からのご依頼をお待ちしております。

 「中国語に関する職務経歴書」はこちらから

ameblo.jp

 

情熱中国(3-1)【後藤ゆかりさん・中国語通訳(司法、その他全般)】

情熱中国(3-3)【後藤ゆかりさん・中国語通訳(司法、その他全般)】 

 

それでは昨日に引き続き、司法通訳への思いや取り組みについてのインタビューを、

早速ご覧いただきたいと思う。

 


 

 言葉は生き物で、文字という表面的なものだけでなく、語気や間合いなども非常に重要な意思伝達要素ですよね。
 他にはどんな感激エピソードがございますか?

 朝鮮族の方で、中国語の他に朝鮮語(韓国語)が話せたこともあり、通訳をされることもあったそうです。また留学生として来日していたため、日本語も聞き取る方はある程度理解ができるようでした。その方が通訳をする側から通訳される側に代わり、今までの自分の通訳を振り返った時に、ポイントしか通訳していなかったことに気付いたそうです。それゆえに「自分の話した内容の全てを訳してもらって、初めて言いたい事が相手にきちんと伝わるのだとわかりました。今後また中国で通訳をすることがあった時は自分もそのようにきちんと訳します。あなたが私の担当で良かったです。ありがとう」と言ってくださいました。
 さらにもう一つは、被疑者が嘘ばかりをつき、言い逃れをしようとしていましたが、突然表情が変わり辛そうな顔をし始めたんです。その後言った一言が「ごめんなさい。嘘をついていました。」どうして急に気持ちが変わったのかを、取調官が尋ねると、「明らかに嘘だと分かるような内容でも、通訳さんは全てそのまま訳してくれます。もうこれ以上嘘を訳し続けさせることは申し訳なくてできません。」と言ってくださったことです。

 

 司法通訳冥利に尽きますね。

 被疑者とは信頼関係を築けていないと本音は出てきません。私たちも信用できない人に自分の事は話しませんよね。中国の方はなおさら。何を話しても全部通訳するというスタンスで、信頼してもらう、安心して話してもらえるように心がけています。

 

 確かに信頼をしていなければ、嘘もつかれてしまいますし、相手の本当の気持ちを引き出すことはできませんよね。
  こういう感激エピソードを得られるために、陰で努力を積み重ねていらっしゃるお姿が目に浮かびます。

 実は検察庁から通訳依頼が来た場合は、罪名しか分かりません。例えば銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)違反と聞けば、普通はピストルを想像されるのではと思うのですが、今まで(私が携わった)案件としてはピストルだったことは1度もありません。一番多いのは調理をするための包丁で、刃渡りの長さや所持の目的、所持の方法などが日本の法律に触れる場合があります。中国の方がその法律を知らずに、自転車のかごに包丁をそのままの状態で入れて移動をしていたというのも、銃刀法違反になります。
 また出入国管理及び難民認定法違反と言っても、パスポート不携帯、あるいはオーバーステイなど、どちらも同じ罪名になります。そのため罪名だけを聞いて覚悟して駆けつけたのに、「え?もう終わり?」と言う案件もあれば、「これはヘビーだった」という案件もあります。
 勾留が決定すると、その後警察での取り調べは基本的には毎日。期間は原則10日間です。ただし、10日間で捜査が終了しない場合は、最長20日間まで延長されます。また逮捕者が出ると、その人を勾留するかどうかを決める手続きが最初に行われます。これは検察庁での「弁解録取」と裁判所での「勾留質問」と呼ばれるものです。この時は通訳の時間自体は比較的短いのですが、書類の確認などに時間を取られるため、拘束時間が長時間になることが多いので、ある意味大変かも知れません。
 他には法廷通訳の時に、その場で初めて会う被告人の通訳をしなければならない時があります。その被告人の中国語がどんなに酷く訛っていようと、癖のある話し方をしようと、最後まで訳し切らなくてはなりません。心の中で「勘弁してよ」と叫んでいる場合もありますが、表情には出せませんしね(笑)。冷静になって通訳するために、ある意味で「開き直る」ということも非常に大切だと思います。
 また法廷通訳の時は、検察官は最低でも1週間ぐらい前に資料を提出してくださるのですが、弁護士からは当日になってやっと資料を受け取れるという場合もあり、怒りにも似た気持ちになることもありました。
 その他法廷通訳では、被告人から検察官、弁護人、裁判官、証人にいたるまで一人で全て通訳をしますので、集中力をいかに維持できるかが非常に大事です。
 民事の場合の法廷通訳は本人による証人出廷と言うのがあり、意見を述べる場面がありますが、正直その証言からだけでは、案件がどういう内容かさえも分かりません。そのため事前に裁判所に出向き、その案件の関連書類すべてに目を通し、案件内容の確認を必ず行います。さらにキーワードになるであろう単語、意味を確認したい単語など、要点や自分が必要だと思った内容は、コピーや持ち出しは不可のため全て書き写し、準備を整えてから通訳に臨みます。

 

 まさに「台上一分钟,台下十年功(=舞台では一分間の演劇でも、舞台裏では十年もの稽古が必要)」ですね。
 さらに法廷通訳は刑事だけではないのですね

 民事や少年事件、家事事件(家庭内の紛争などの家庭に関する事件、例えば離婚に関する事など)もあります。

 

 司法通訳に挑戦してはみたいけれど、こんなに奥深いとなると気後れしてしまう方もいらっしゃるのではないかと思うのですが…

 裁判所が毎年言語を変えて、例えば中国語は3年に1度と言う風に、法廷通訳人研修会と言うのを開催しています。研修内容も私の場合、「登録をしたが経験のない、或いは少ない人向けの研修(地裁で受講)」→「ステップアップ研修(名古屋高裁で受講)」→「更に難易度の高い内容での研修(大阪高裁で受講)」と言う風にレベルアップしていきました。
 新人向けの研修から上級向けの研修まで、全て現職の裁判官が裁判官役を、裁判所職員が検察官役や弁護人役を担当し、本番さながらの模擬裁判形式で行われます。私の場合、経験者対象の高裁で行われた研修では、裁判員裁判の模擬裁判や、同じ内容で自白事件(認めている場合)と否認事件の2パターンの模擬裁判なども経験しました。そのため、高裁の研修は2日に及びます。
 研修は本番さながらに行われ、翻訳する文書も事前に届き、準備をして臨みます。研修当日に「あなたは冒頭陳述」と役割分担が割り振られます。被告人質問の担当になるとシナリオがないため、その場で考えて挑まなければなりません。

 

 そういう研修の場を設けてくださっているのですね。この研修は日本の方、中国の方を対象に一緒に行われるのですか?

 そうです。私は前回と今回2度にわたり、初心者向けの研修講師を務めたのですが、中国の方に中国語の訂正をしなければならず、なんとも言えない気持ちになりました。また岐阜県のデータになりますが、司法通訳に携わる日本人は私を含め2人ほどで、帰化された方を含め中国語ネイティブの方がほとんどです。

 

 日本語ネイティブの方はお二人ほどしかいらっしゃらないのですね。
 これからますます中華系の方の来日が増えると思われますので、日本語で微妙なニュアンスを伝えられる人材はさらに多く必要になってきますね。

 日本語の堪能な被疑者は、通訳されることにプライドが傷つくことも理解はできるのですが、微妙なニュアンスを伝えきれずに、聞いているこちらがもどかしいこともあります。例えば「200円“しか”ないから、お金が欲しいです」という内容を、「200円ありますから、お金が欲しいです」と言うのでは全くニュアンスが異なります。肯定表現はポジティブにとられてしまいますから。ほかには「誰が話したいです。誰が話します。(中国語では「谁想说谁就说」)」というような、中国語が理解できる人が聞くと意味が取れるような不自然な日本語を、違和感のない日本語に“訳する”と言う意味でも、日本語で微妙なニュアンスを伝えられる人材は必要ですね。

 

 日本の方と中国の方の間でニュアンスや感覚の違いで困ること、あるいはどんな内容が翻訳において難しいでしょうか?

 まず感覚の違いについては色の表現です。例えばブルーとグリーン。山の色は?と聞かれて、日本人でしたらおそらく「グリーン、緑」とほぼみなさん答えられると思うのですが、中国の方は「蓝色(ブルー)」と答えます。日本では人、物の特定をするとき、色が1つの証拠となるときがあります。(日本人からすれば)グリーンの車でも、「蓝色(ブルー)」と言われてしまうと、印象が全く異なることになりかねません。その他(日本人からすれば)どう見ても金髪だと思っても「黄色」だったり、茶髪を「咖啡色(コーヒー色)」と言われてしまうと、普通日本人なら茶色よりもっと黒い色を想像してしまいます。
 その他、匂いに関しても見えないこともあり、非常に難しいと思います。例えば日本人だと「香菜(=パクチー)はカメムシの臭い」などと表現されることがあります。しかし中国の方はまず香菜を臭いとは思っていないですし、ネガティブなイメージはないと思います。そのため「カメムシの臭い」と訳しても全く意味が通じないと思います。共通認識がないものを訳さなければならないことは、非常に難しいと思います。

 

 共通概念がないものを訳す。非常に骨が折れる作業ですよね。
 ところで、時間があれば傍聴席にいらっしゃるようなお話を、以前にお伺いしたような気がしているのですが、いかがでしょうか?

 検察官が起訴をするかどうかを決定する際の判断材料の一つに、調書があります。そしてその調書は、私が日本語に訳したものに基づいて作成されますし、裁判になった際、証拠として採用される可能性の高いものです。裁判では被告人が意見を述べる機会が設けられてはいるものの、それだけで刑を判断する訳ではありません。取り調べの際の、私の訳を基に作成された調書も非常に重要な証拠となるため責任は重大です。(裁判員裁判では書類の扱い方が若干異なりますが・・・)。そのため、案件を最後まで見届けたいという思いがまず1つ目の理由です。もう1つは被告人質問に出てくる内容を理解しているため、他の方が訳をするのを聞き、同じニュアンスで訳がされているのかを確認することが非常に勉強になるからです。さらに3つ目として、法廷通訳は中国語ネイティブの方が多く、ネイティブ表現を覚えることができるということも挙げられます。ただ、万が一法廷通訳の方がニュアンスを取り間違えていることに気付いても、法廷内は発言禁止のためもどかしい思いをする時もあります。法廷通訳を務める方が知り合いで、その方と間違いを指摘できる関係性であれば、休憩時にお伝えしたりすることもあります。そのため「居てくれるだけで安心する」と言ってくださることもあり、大変恐縮ではありますが、嬉しくもあります。
 傍聴席にいるのは、単純に傍聴マニアと言うこともありますが(笑)

 私がもし法廷通訳をしなければならない場合、ゆかりんさんに傍聴席に居てほしいと思います。

 

(3部につづく) 

 

情熱中国(3-1)【後藤ゆかりさん・中国語通訳(司法、その他全般)】 

情熱中国(3-3)【後藤ゆかりさん・中国語通訳(司法、その他全般)】

 



【これまでの『情熱中国』の記事はこちらから】 

 今後も中国(あるいは中国関連)で奮闘される方を取材、あるいはインタビューをし、「人と人」「人と情報」をつなげたいという理念のもと、有益な情報を皆さんにも共有していただけるような、そんな企画になればと思っております。

 ある日突然、インタビュー依頼のご連絡が届いた方には、ぜひ今お持ちの専門性、独自性、影響力等の非常に価値のある情報やご経験、熱い思いを、存分にお伝えいただければと存じます。また逆に中国、あるいは中国語で「こんなことを知ってほしい、こんなことを伝えたい」という情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報いただければ、取材やインタビューをさせていただきたいと思います。

 これからもこの企画をはじめ、ブログをご愛読いただければ幸いです。

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