今年の十五夜は、明後日9月24日。
中国では「中秋節」と言い、今日22日から土日を挟んで3連休である。
特に満月の「丸」は団欒を表し、連休を利用し家族や親戚が集まりひと時を過ごす。
そのため、満月に家族を思い詠んだ歌や詩が、唐詩や宋辞でもよく出てくる。
有名どころでは、テレサ・テンさんの歌詞にもなっている『但願人長久』。
日本語訳が表示されるので、こちらも併せてどうぞ!
余談だが、中国学習者にはテレサ・テンさんの方をお勧めしたい。
日本人が間違いに陥りやすい発音を、きちんと発音してくれているためである。
この『但願人長久』の歌詞は、もともと宋辞の1つであり、
あの有名な詩人、蘇軾(=蘇東坡)の『水調歌頭 丙辰中秋』が原作である。
その他中秋節のこの季節を詠んだもので、有名どころと言えば
王維の『九月九日憶山東兄弟』、王建の『十五夜望月寄杜郎中』、
白居易の『八月十五日夜湓亭望月』、杜甫の『八月十五夜二首』などがある。
日本ではお団子であるが、中国では「月餅」と呼ばれるお菓子をお月様にお供えする。
と書いたが、中国では月にお供えよりは、自分たちで食べると言った方が良い。
里帰りで家族、あるいは親戚一同の団欒の席に持っていったり
会社の福利厚生の一つとして社員に配られたり、お得意先に送ることがよくある。
もちろん月餅が好きで「マイチョコ」ならぬ、「マイ月餅」もありだ。
「月餅引換券」もあり、手荷物にならないように配慮されたり、
遠くの取引先には郵送代が抑えられるというメリットもある。
またその引換券を買い取る業者もあり、甘いものが苦手な私は、ここだけの話
何度も利用させていただいた。
また袖の下がまだ有効だった一昔前の中国では、月餅の箱の一層目は月餅が
二層目には毛沢東さんが(日本でいう福沢諭吉さん。つまり100元札)が、
束になってずらりと並んでいることもあった。
中身はこし餡が一般的だが、栗、ゆで卵の黄身、ヤシの実のこし餡や、5種類の木の実
その他、南方ではお肉が入ったものなど、最近は特にバラエティに富んでいる。
主人と私は甘いものは苦手で、我が子も甘いものをあげるのは極力控えているため、
自ら購入した月餅が、我が家の食卓に上ることは、今年もないだろう。
(左が栗、右が餡子)
そう思っている頃、我が子が昔通っていた幼児教育の教室から、いつものごとく
Wechatで「月餅作りイベント」の案内が届く。
9月16日(土曜)午後4時半~、親子20組を募集するという内容だ。
この週は主人の出張が続き、我が子も私と二人きりの日々が続き退屈だろうし、
中国文化の一つである「月餅」も知ってほしい、
また幼児教育のレッスンがあと4コマ残っており、このイベントは2コマ分だったことも
「参加希望」を後押しした理由の一つだった。
当日、集まった20組の親子。
まずは先生たちと一緒にダンスをしたり、歌を歌ったり…
その後、ビデオで「中秋節」の由来と伝説を学んだり…
(中国語字幕付きなので、中国語学習者はぜひ一度チャレンジしてみてください!)
昔むかし、ある日突然に太陽が10つ出たそうな。水は涸れ、干ばつに苦しみ、人々はもう生きてはいけないと思っていると、一人の若者が立ち上がったんじゃと。若者の名は後羿(こうげい)。その若者はこの事実に怒り、人々のために、山頂に登り9つの太陽を次々と弓で射り落としたそうじゃ。そして最後の太陽に「日の出日の入りの時間を守り、二度と人々を苦しめるんじゃないぞ!」と言い、約束させたそうな。
その後その若者は、人々みんなから尊敬され、大事にされたそうな。まもなく後羿は優しく綺麗な女性、嫦娥(じょうが、こうが)と結婚したそうじゃ。またあの勇敢さは語り草となり、多くの弟子が彼のもので修業をしたそうな。蓬蒙(ほうもう)も彼の弟子の一人だったんだと。ただこの時、後羿は蓬蒙が悪人であることに気付いていなかったようじゃ。
ある日、後羿が崑崙山を通りすぎる時、王母娘娘(西王母)に出会い2粒の不老不死の霊薬を授かったそうじゃ。王母娘娘は「お前は人々を助け、この霊薬を与えるのに匹敵する者じゃ。1粒飲めば不老不死に、2粒飲めば即座に仙人なるからのぉ」という。後羿は飲むのを惜しみ、帰宅し妻に保管させたそうじゃ。でもその様子を蓬蒙が見ており、悪事を思いついたんじゃと。
そのまたある日、後羿が弟子を連れて狩りに出たそうじゃ。悪い蓬蒙は仮病を使い家に残り、しばらくして槍を持って嫦娥に詰め寄り、霊薬を渡すように脅したのじゃ。嫦娥は蓬蒙を打ち負かすことはできないと思い、さらに悪人の蓬蒙に霊薬を渡すわけにはいかないと、霊薬を2粒一気に飲み込んだのじゃ。そうしたら、嫦娥はゆっくり地上を離れ、天に昇り、仙人になったそうじゃ。
天に昇った嫦娥は王母娘娘に「できるだけ人の世の近くにいさせてください」と頼みこんだそうじゃ。すると王母娘娘は「月は人の世に近いが、とても寒い。覚悟はあるか?」と尋ねたらしい。それでも、嫦娥は頑なに「行かせてください」とお願いしたそうじゃ。
後羿は蓬蒙の悪事を知り、復讐しようと探し回るが、すでに蓬蒙の姿はどこにも見えなんだ。悲しみに暮れる後羿は夜に月を見上げ「嫦娥、私の妻よ」と苦痛を叫んだんじゃと。すると突如月に不思議な影が映り、その影が動いて見えたそうじゃ。「ん!? あれは嫦娥ではないか?」と思っていると、それはまさに嫦娥が月から人の世を見て後羿を探していたんだそうじゃ。
後羿はすぐさま使用人に月の下に机を用意させ、嫦娥が普段好きだった果物と月餅を並べさせ、嫦娥への恋い焦がれる思いを伝えたんじゃと。
この話しを聞いた人々もお菓子や月餅を並べ、優しかった嫦娥の幸せと平安を願うようになったそうじゃ。そのため旧暦の8月15日に人々が毎年行うようになり、現在我々が知る「中秋節」になったとさ。
ちなみに雑学だが、2004年から中国で正式に開始された「月探索プロジェクト」の
探索機の名前が『嫦娥』と名付けられ、「嫦娥プロジェクト」と呼ばれている。
かなり話しが逸れてしまったので、幼児教育の教室まで話を戻そう。
ビデオを見た後、親子参加のゲームを挟み「食べたら歯磨き!」と言う人形劇を鑑賞。
内容は「きちんと歯磨きをしないと、中秋節でおいしいものがたくさんあるのに、
虫歯になったら食べれなくなっちゃうよ!」と言うお話し。
さすが、子供たちを飽きさせない。
せっかくなので中国幼児教育の人形劇、その一部をどうぞ。
そして最後は、待ちに待った月餅作り。
まずはひと家族ごとに材料の「月餅の皮と餡」、道具の「型押し」が配布される。
そしてお持ち帰り用として、個々のパッケージと外箱も渡される。
ホンモノの月餅は最後オーブンで焼くのだが、あくまでも幼児教育の一環。
子供の安全第一を考えた月餅になっている点は、ご容赦いただきたい。
作り方の説明を聞き、我が子そっちのけで(ごめんね)、作ってみた。
1つ作り動画撮影が終了したので、我が子と一緒に残りを作り上げた。
その月餅がこちら。
左上の餡子がはみ出しているのは、我が子が少し味見をしたからというのは
ここだけの秘密にしておく(笑)
主人が出張中のため、もともとは我が子と二人で参加する予定が、
仕事を終わらせ、急いで会場に駆けつけ、ギリギリセーフで間に合わせてくれた主人。
親子3人で 中国の伝統文化を考える、貴重な時間を過ごせたことに改めて感謝したい。
9月24日。
せっかくなので、お月見団子も一緒に作って「日中異文化共存」をしながら
満月を楽しむことにしよう。