連日のネガティブネタで大変申し訳ないが、「まぁ、生きているからには、そういう事の
ひとつやふたつも、あるだろう」と流していただければ幸いである(笑)。
この事件は××銀行で、携帯電話番号の変更をしようとしたときに発生した。
ただ事件を語る前に、予備知識として中国の銀行状況を少し説明をしておきたい。
まず中国国内のどの銀行でも口座を開設するとき、携帯番号が必要である。
なぜなら承認番号などが、SNSで送られてくるためである。
(余談だが、中国の銀行は通帳とキャッシュカードは連携しておらず、ATMはカードのみ対応)
私の××銀行のキャッシュカードは上海でいた時に手続きしたため、上海の携帯番号で
登録していた。
しかし結婚のため瀋陽に引っ越しし、市(あるいは省)を超えての通話は、
長距離通話とみなされ通話代金が高くなるため、瀋陽での携帯番号に変更した。
ただすぐに変更したわけでなく、中国の携帯電話はプリペイド式のため、瀋陽に移ってきたころは
まだ残高がかなりあり、2年ほど前に晴れて“瀋陽番号”となった。
携帯番号を変更した際、なぜすぐに銀行の登録情報の変更をしなかったのかと言えば、
以前は市や省の区分が強く、銀行をはじめいろんな手続きが発行元の市(あるいは省)
でしか、取扱い不可であったためである。
つまり上海で銀行口座を開設した場合は、上海でしか変更手続きなどができないのだ。
またここ2,3年は支付宝(=アリペイ)や微信(=Wechat)などの、IDキャッシュでの
支払いが主流になっているため、現金の出し入れはほぼする必要がなく、銀行カードがなくても
不自由しなかったため、キャッシュカードの登録変更手続きを長年放置していた。
しかし、世は常に進化している。
去年あたりから市(あるいは省)を越えての現金引き出しも、手数料がいらなくなり、
今回のような電話番号変更などの、各種手続きも可能となった。
ただこういう手続き関連は、何かと面倒で時間がかかること、“中国らしさ”にイライラ
することもあり、なかなか重い腰が上がらない。
しかし思いったったが吉日、とにかく足を運んでみよう動いたのが先日のことだった。
銀行の出入口で、番号札を受け取り順番を待っていた。
ふと、待ち時間で申請書を記載しておこうと思い、ロビー案内人に申請用紙があるかどうかを
聞いたことが、そのそもの間違いだった。
「登録内容変更用紙は…」と言ったところで、彼女の携帯電話が鳴り、
「電話にでるから、あの人に聞いて」と、もう一人の女性を指差される。
(ちなみにこういう事は、ごくごく普通のことである)
指示通り、もう一人の女性ともとに歩み寄り、
「携帯番号の変更をしたいんですが」
「あなたの名義?」
「そうです」
「移動(=China Mobile)? それとも聯通(=China Unicom)?」
「移動です」
「番号は?」
「1×××××です」
中国の業務Appは非常に発展しており、携帯電話にその企業の業務Appをダウンロードしておけば
業務に必要なさまざまな情報を、自分の携帯から確認できるようである。
その女性も私の携帯番号を自身の業務Appに入力し、私の名前を確認しようとしたのだが
標示されたのが「***********I」。
少し補足しておくと、おそらく中国人の名前であれば
李三さんは「*三」「李*」、張一山さんは「張*山」「**山」と言うように表示されるのだろう。
しかし外国人は名前はアルファベット登録をしなければならず、数多くのアスタリスクと
(おそらく彼女には見えなかったであろう)アルファベットを見て、パニック状態に
陥ったのではないかと思われる。
「あなたの名前じゃないから、変更できない」
「ちょっと待ってください、まだ私、名前も言ってませんが、なぜ私じゃないと言えるんですか?」
「無理、無理!あなたの名前じゃない!」
「ちょっと待ってください」
「無理、無理、無理。本人じゃないと変更できないの!!!」
「いやいや、ちょっと待って!」
「あなたの名前じゃないの!無理なものは無理」
そう言い残したと思うと、先のATMコーナーに行き、違うお客様の相手をし始めた。
そこで「私の名前、ご存じなんですか?」という問いかけに対し、
顔と体はATMのお客様の方を向いたまま、手だけで「シッ、シッ」と追い払うように、
された時点で、ブチギレタ!!!
私が一気に捲し立てたからか、先程電話に出たロビー案内人がなだめに入ってきた。
それでも相変わらず、「無理なものは無理」と言い張る彼女の態度に、怒り心頭。
「あなたは私が外国人である事さえも確認せず、私のパスポートの名前も確認せず、
私の何が分かるというのですか!」
と言ったところで、相手の女性も全く引かず。
「あなたがきちんと説明しないのが悪い」
「説明しようとしたら、ATMの方に行ったのはあなたですよね」
「でもあなた(の携帯番号)でないから無理」
「まずは話を聞いてもらえませんか?」
「だから、できないものはできないの!」
収集が付かない状況を見て、もうひとりの女性が「裏方の仕事お願いします」と
その女性を、バックヤードに行くように促した。
クレームが起こった時、人を変えるのは一つの手段だが、
クレームを起こした女性従業員は自分には非がないと言う態度を変えず、バックヤードに
促されたときも、不満の嵐。
その女性の後ろ姿を見ながら、怒りで手が震えるとはこのことか、と思うほどだった。
これはただ事ではないと思ったのか、すぐに理財窓口に通され、早速携帯番号の
変更手続きが行われる。
しかし、残念なことに理財窓口の方がパスポートでの変更手続きを知らず…。
その頃には怒りもかなり押し殺せるようになり、「待ちますから、良いですよ」と
理財窓口を後にした。
番号札の番号になり、窓口手続きが開始された。
窓口の男性係員によると「書類なんて、窓口で書けばいいのに」とのこと。
その頃にはかなり冷静になっており「それは知ってるけれど、待ち時間を利用したかったし、
先に書いておくと、一人あたりの業務時間も短くて済むでしょ」なんて話をした。
「日本人らしいね。中国人は自分さえよければいいからさ。他人なんて知ったこっちゃない」
そんな話をしながら、5分ほどで手続きは完了し、銀行をあとにした。
しかしだ。
基本あまり引っ張らず、夫婦ケンカも次の日まで持ち越さない私であるが、今回ばかりは
次の日になっても、心のモヤモヤは一向に取れない。
この怒りの矛先が、気の許せる家族に向かうことは避けたいと思い、主人にWechatで
連絡を入れた。
「どうも心のしこりが取れないので、クレームの電話を入れたいんだけれど良いかな。
あんまり意味ないかも知れないけれど。でもこのままでは、イライラするだけだし。
(私の名前から、夫婦関係が分かり)取引銀行として迷惑をかけたりしない?」
「××銀行はメインバンクじゃないし、メインバンクだったとしても今回は相手が悪い。
電話をして気が済むなら、クレーム言えばいいよ~。がんばって~!」と返ってきた。
そこで××銀行のカスタマーサービスに電話してみた。
実は電話をする前、正直対応にはあまり期待をしていなかった。
というのも留学時代、通帳を失くしてしまったことがあり、カスタマーサービスに
電話した時の対応があまりにもお粗末だった経験がある。
そのため怒りにさらに油を注ぐだけかもしれない、とさえも思ってもいた。
10年一昔、とはよく言ったものだ。
カスタマーサービスの彼女の対応が、非常に素晴らしいものだった。
「この件について、発生した支店に調査し、フィードバックをさせていただきたいので、
お時間を頂戴してもよろしいでしょうか?」と言う問いかけには
「クレーム相手はロビー責任者だと言うこともあり、おそらく真実はもみ消されるか、
歪曲されて上がってくることが予想されること。なによりあなたのご対応のお陰で、
怒りが静まったこともあり、フィードバックは構いません。
あなたは決して悪くないのに、嫌な思いをさせてごめんなさい。お付き合いいただき
ありがとうございました」と伝えた。
「××銀行の一人として、本当に心からお詫び申し上げます」という言葉を聞き、
「悪いのはその従業員で、なぜ私が謝らなければならないの」とまで言われた過去を思い出し、
(たとえマニュアルだったとしても)ここまでのサービス業の意識改革があったことに、
中国の第三次産業の著しい発展を、目の当たりにしたような気がした。
最近、瀋陽の小さなレストランでさえも、サービス意識が向上してきたことが分かる。
世界の工場からの脱皮を果たし、世界の中国に向かい、日々発展、向上をしている中国。
“サービス業”の意識が国土全体に浸透し、さらに深いものになれば、国は一気に
成熟してくるだろう。
正直カスタマーサービスの彼女の対応から、中国が目指す未来像を垣間見たような気がした。
彼女のお陰で××銀行にも、また足を運ぶだろう。ただ、あの支店には行かないが…(笑)
追記:
今回この事件が発生したのは、中国四大銀行の1つです。正直他の手続きにしても、その地位に胡坐をかいているのか、「う~ん」と思ってしまうことが多いです。しかも今回はロビー責任者とあって、まもなく定年(中国は男性は60歳、女性は55歳)というほどのお歳にお見受けしました。
中国メガバンクの歴史は、始め「中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行」の四行だったところに、国務院の批准を受け新たに「交通銀行」が加わった背景もあり、交通銀行は自分たちの弱みも知っているのか、サービスの質はトップだと私は思います。どの銀行が良いかと迷っていらっしゃる方は、交通銀行がオススメです。