先日友人から電話で、こんなご相談を受けました。
(友人は、中国からの旅行客も多く訪れる販売店で販売職に就いています)
このコロナ禍で、今業務が楽だからこれを機会に、本格的に中国語勉強しようと思って。
以前から中国からの旅行客相手に、会話ができればと言っていたもんね。
そうそう。中国語を使って直接販売ができれば、売上が上がるよね。
そうだね。じゃあ、専門用語も多いから商品に特化した会話講座だね。
う~ん。でも0から始めて、HSK4級を取りたいんだよね。
正直HSK5級を取得しても、スピーキングを鍛えなければ、正直接客では使いづらいかな。HSKなどの学習の中国語と、接客の中国語は単語なども少し違うから。
あと私アナログ人間だから、オンラインじゃなくて通学がいいんだ。通学の時間やりくりするの大変だけど
そうなんだ…。オンラインだと通学時間を短縮できるメリットもあるよ。
近所にはスクールが1つしかないから、とりあえず見学行ってみようと思って
うん。体験学習は大切だと思う。先生との相性も。いってらっしゃい!
後日、中国語教室に見学に行き、早速通学することを決めてきたそうです。
売上を上げるため、接客中国語を話したいという目的がありながら
HSK4級取得が目標という彼女。
矛盾とまでは言わないにしろ、勉強方法が少し異なることが気になっており
おせっかいとは思いつつ、もう少し状況を詳しく聞いてみることにしました。
先生と、中国語を学ぶ目的や動機について話してみた?
うん! それと先生の話を聞いて、やっぱりみんな大変な思いで勉強してるんだね。先生にはHSK1級取得には1年。HSK4級までは最低4年かかるって言われたよ。とにかく授業料が安いし、行ってみるよ。
えぇ?! HSK1級に1年? 価格が安い⁉ うぅ~ん…。
老婆心ながら、
彼女の今のレベルは、“你好,欢迎光临(=いらっしゃいませ),
下次再来(=またお越しくださいませ)”というような接客用語ワンフレーズと、
“日霜(=ディクリーム)、晚霜(=ナイトクリーム)、口红(=リップ)”
というような販売に直結している、売れ筋の名前ならば言えます。
勤務先は販売店だけあり、日本語が話せる中国人スタッフもいることで、
近くで会話を聞いたりし、「音として」中国語を耳にしています。
また今はコロナ禍とあり、販売員を減らすために勤務数も少なく
学習時間が、比較的取りやすい環境にあるそうです。
そんな恵まれた環境と、少しの基礎がある彼女。
もちろん資格取得のための学習を、否定する気はありませんし、
学習期間が短く合格を手にされる方は、人並み以上の努力を重ねられた方々であり、
そのがんばりは、大いに称えられるべきだと思います。
(もちろん語学学習はそれぞれの目的、ゴールがありますが)、
その言語をコミュニケーションのツールとしてとお考えであれば、
彼女の最終ゴールが資格試験合格で、いいのでしょうか…?
次に、HSKに注目してみると、
(1級~6級の模擬試験はこちらから、ダウンロードしていただけます)
HSK1級
HSK1級は、受験生の日常中国語の応用能力を判定するテストです。
「中国語の非常に簡単な単語とフレーズを理解、使用することができ、具体的なコミュニケーションを行うことができる。中国語学習するための基礎能力も備えている。」ことが求められます。
学習目安
150語程度の常用単語と文法知識を習得している者を対象としています。大学の第二外国語における第一年度前期履修程度の学習が目安とされています。
点数と評価
聞き取り、読解の配点はそれぞれ100点、合計200点で評価されます。
1級では6割(120点)以上のスコアが合格基準となっています。
試験概要
1級の試験は全てマークシート方式の問題となっています。
試験は聞き取りの放送のみ全て中国語で行われます。
試験内容
漢字圏である日本人にとって、HSK1級は比較的取得しやすい資格の1つです。
そのため、学習を始められて2~3か月ほどで、
中にはいきなり2級を目指される方も、多くいらっしゃいます。
(さらには仕事をしながら、1~2年ほどで最高級のHSK6級を取得される強者も)
そのため、通学しようとしている語学学校の講師に
HSK1級取得に最低1年、4級取得に4年以上と言われたという彼女の言葉から、
この語学学校は、講師が自分に保険をかけているとしか思えませんでした。
生徒が0から始め、どこから手を付けていいのかわからない、
また語学学校の良し悪しの判断もつかないことをいいことに、
そのような導き方をすること。
(「これ一冊でマスター」というような謳い文句。逆もまた然りですが…)
さらには、彼女曰く月賦制のレッスン代は金額を抑えたものだとしても、
全体的に見たときには、決して安くない金額になっているという「からくり」で、
教えているのは、いかがなものでしょう。
(それがビジネスと思われる方も、いらっしゃるかもしれませんが…)
彼女にはそれとなく、その語学学校の「からくり」を伝えてみたものの
路線変更はしないとのこと。
これら彼女とのやり取りの中で、これから私自身が、
中国語講師としての道を歩むとあれば、
今日のやり取りを、絶対に忘れてはならないと肝に銘じました。
目先の安さだけでなく、本当に「価値の高い」授業料を、
お支払いいただけるようにならなければ。
また受講生の方々を、しっかり導けるようなコンサル能力も身につけなければ。
そのためにこれからも、さらに精進しなければという自分自身の戒めを込め、
記事にしたいと思います。