ちゃーちゃん@中国瀋陽

オンライン中国語講師|中国語ネイティブの発音と、より楽しく学べる方法を模索中|漫才や“脱口秀”など、面白い事(言葉遊び)が大好きな関西人

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究極の中国語リスニング Vol. 1 発売記念(5)

 『究極の中国語リスニング Vol. 1』に携われることで、私自身もたくさんの学びがありました。力不足で、悩むこともありましたが、家族や“导师”(大学院の卒業論文指導教員)の励ましがあり、今日の日を迎えることができました。最終回となる今回は、周りの励まし、そしてみなさんへのメッセージをお伝えしたいと思います。

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家族の喜び

 書籍販売のサイトに掲載されたとき、夫は静かに、でも確かに私の努力を認めてくれました。私の目を見て静かに一言、

「生きてきた証を作れたね。」

 たった一言なのに、その言葉の重みが心にじんと響きました。執筆中、何度も徹夜し、悩み、締め切りとの闘いを繰り返してきた日々。その姿をずっと見てきて、時には慰め、時には叱咤激励し、うまく書けずに折れそうな心をずっと支えてくれました。

 締め切りに追われた時は、夫が子供の寝かしつけをよくしてくれました。

 三校のチェックをしている夜、飲み物を用意しようとキッチンに向かうと、寝室のドアの向こうからこんなやり取りが聞こえてきました。「ママたちが書いている本は、きっと多くの人に楽しさや喜びを届けられる本だから、ママと一緒に眠れず寂しいかもしれないけれど、自分のことは自分でするということでママを応援しよう!」という夫に、「うん!」と力強く言う子供の声。耳に残ったこのやり取りに、何度も励まされながらここまできました。


 私の子供は、どちらかというとオーディオブックや音声を通じて言語を学ぶタイプで、活字よりも耳から情報を取り入れることを好んでいました。しかし、今回私が本を出版することをきっかけに、明らかに書籍を手に取る機会が増えたのです。

  「ママの本って、どんなことが書いてあるの?」

 そんな言葉とともに、日本語の本にも手を伸ばし、書籍に興味を示す姿を見たとき、今回のプロジェクトに携われて、本当によかったなと思いました。

 「学ぶことを楽しんでほしい。」

 親として願っていたことの一つが、まさか自分の本を通して叶うなんて思ってもいませんでした。本を出版したことが、子どもの世界を少し広げるきっかけになったのなら、これ以上嬉しいことはありません。

 

祖母の涙

 また家族の中でも、特に祖母の喜びはひとしおでした。

 というのも、実は祖母と父は、歴史的な背景から中国に対して複雑な思いを抱えており、私の中国留学には強く反対していたのです。 特に祖母は、「なぜわざわざ中国へ行くのか」「仕事を辞めてまで、留学する意味があるのか」とずっと留学に反対し続けていました。

 そんな祖母が、中国語を学ぶ私の姿を本当の意味で認めてくれたと感じた瞬間が、これまでに二度ありました。

 一度目は、留学中に祖母を北京旅行に招待したときのこと。毛沢東記念館を訪れた際、警備員に移動を促されるほど、祖母は深々と毛沢東氏にお辞儀をしました。時代ではありますが、夫(私からすれば祖父)をなくして苦労したこと、孫がその中国に行くということ…。その姿を見た瞬間、祖母の許しを得たようで、目の前の視界がぼやけました。

 そして二度目は、今回の書籍出版を伝えたときのこと。祖母は大粒の涙を流しながら「がんばったなぁ」と一言。あれほど反対していた祖母が、こうして認め、喜んでくれたことが、私にとってどれほど嬉しかったか分かりません。

 

両親からの言葉──言葉数少ない父、温かい母

 父は多くを語る人ではありません。

 それでも、私の名前がAmazonに載っていることを知ると、ぽつりと「Amazonでも、お前の名前が検索できるのか。すごいな」とつぶやきました。 それだけの言葉なのに、父なりの誇らしさが伝わってくるようでした。

 母は、「おめでとう」と直接電話で言葉をかけてくれただけでなく、LINEでもメッセージを送ってくれました。

 「恵は今まで一生懸命頑張ってきたと思います。そこまでしなくてもと思うくらい(笑)。あなたは私は運だけでここまでやってきたというけれど、もちろん運もあるかもしれないけど、少しの実力はあると思いますよ。自信をもって!それと、みんなやご先祖様も守ってくれていると思います。野球の大谷さんや、将棋界の藤井さん、あの人たちは実力ももちろんあるけど、自分が大変な目に遭っていても人を批判せず、自分の今やるべきことをやっていますよね。出版や卒業論文に関わり、人としての勉強ができたことは、とてもよかったと思います。これこそ教育の尊さだと思います。妻、母、講師、大学院生と二刀流どころか三刀流、四刀流こなしているので、休みながらこれからも続けてください。」

 母らしい、あたたかく、そしてユーモアのある励ましの言葉でした。

 

导师(論文指導教員)の言葉──厳しさの中にある温かさ

 論文指導教員である遼寧大学 国際教育学院 副学院長の趙春秋先生は、とても厳しい方です。

 研究室に呼ばれるときは、足がすくむ思いをすることもあります。時には、厳しい指摘に落ち込むこともありますが、それもすべて研究の質を高めるための愛のある指導だと感じています。 そんな趙先生がある日、私にこうメッセージを残してくれました。

  •    “你真的很棒!”(あなたは本当に素晴らしい!)

 短い言葉ですが、その一言にどれほど励まされたか分かりません。さらに、今回の出版を伝えたときにはすぐに電話をくださり、「献本をお送りしたい」と伝えると

  •    “我很荣幸。”(とても光栄です。)

 私が厳しく指導されながらも一生懸命取り組んできた姿を、趙先生も見守ってくれていたのだと実感しました。この一言が、これまでの努力を肯定してもらえたようで、胸が熱くなりました。

 

家族と导师の言葉が次の一歩に

 夫や子供、祖母の涙、父の一言、母の温かいメッセージ、そして导师の励ましの言葉。それぞれの言葉が、私にとって何よりの支えとなりました。

 これまでの道のりは決して平坦ではなく、時には立ち止まり、迷うこともありました。それでも、こうして家族や导师が喜んでくれたことが、今までのすべての努力を報われたように感じさせてくれました。そして、これからもこの言葉を胸に、また一歩ずつ前へ進んでいきたいと思います。

 

まとめ──このチャンスを通して感じたこと

 今回、この書籍の制作に携わるという大きなチャンスをいただき、私の中にはさまざまな思いが巡りました。

 最初に感じたのは、果たしてこの責任を最後まで全うできるのだろうかという不安でした。素晴らしい先生方、編集者とご一緒させていただくからこそ、自分が足を引っ張ってしまわないかというプレッシャーもありました。

 

 なぜなら、私は決して中国語のエリートではないからです。

 

 むしろ、かつては「もう帰国したほうがいいのでは」と言われるほどの落ちこぼれでした。それでも、多くの方々の支えがあったからこそ、学び続けることができ、そして今回、この書籍の制作という大きな経験をさせていただくことができました。だからこそ、今、中国語を学び続けているあなたに伝えたいことがあります。

 

 まずは、ここまで頑張ってきた自分を認めてあげてください!

 

 もしかすると、今この本を手に取ってくださった方の中には、「思うように学習が進まず、もうあきらめてしまおうか…」と感じている方もいるかもしれません。あるいは、学業や仕事、家庭の忙しさに追われ、中国語を続けることが難しくなってしまったという方もいるでしょう。

 そんなふうに感じてしまう自分を、どうか責めないでください。むしろ、ここまで歩んできた自分の努力を誇りに思ってほしいのです。

 あなたはここまで、

  • 新しい言葉を覚えようとし、発音に悩み、文法を理解しようと努力した。
  • リスニングが聞き取れず落ち込むことがあっても、何度も何度も聞き直した。
  • うまく話せなくても、それでも勇気を出して中国語を口に出したことがあった。

 それらは、決して簡単なことではありません。ここまで続けてきたこと自体が、ものすごい努力の証なのです。

 

 そして、焦らなくて大丈夫です。

 

 学習にはみなさんそれぞれのペースがあります。速く進める時期もあれば、ゆっくり休む時期があってもいいんです。大きな目標はいりません。ただ、自分に正直でいいんです。中国語を学ぶ理由は、人それぞれです。

  • 中国語教育の世界を担っていく未来の先生を目指す方
  • 「あの中国の俳優さんがカッコいい!」というきっかけから、中国語にハマった方
  • 旅行や仕事を通じて、中国語を学び、世界を広げたい方

 

 どんな理由でもいい。どんな形でもいい。

 

 中国語に出会ったことで、あなたの世界はきっと、今までとは違う景色になっているはずです。

 だから、大きな目標を設定するのでなく、一歩でも前に進める目標設定でいいんです。

  • 「毎日1分でも中国語に触れる!」
  • 「好きなフレーズを1つ覚える!」
  • 「今日はちょっと発音を練習してみる!」

 そんな小さな一歩でも、それは確実にあなたの成長につながっています。

 
 万が一学習が止まってしまったとしても、それは「やめた」わけではなく、ただ「少し休んでいるだけ」です。またやりたくなったとき、戻ってくればいい。中国語は、いつでもあなたを待っています。

 この書籍が、あなたの中国語学習の新たなきっかけになれば、と願ってなりません。

 

 私自身、何度も何度も壁にぶつかり、悔しくて涙を流したことも、両手両足でも足らないぐらいありました。言うならば、今でもありますし、きっとこれからもあります。それでも続けてきたからこそ、今の自分があります。だから、もしあなたが「もう無理かも」と思ったとき、この本が「もう少し頑張ってみようかな」と思えるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

  • 「中国語を学んでよかった!」
  • 「中国語を通じて、今まで出会えなかったような人とのつながりができた!」
  • 「日々の生活に、新たな楽しみが増えた!」

 もし、この書籍が、そんなふうに皆さんの中国語学習の旅を少しでも豊かにすることができたなら、本当に嬉しく思っております。


 お忙しい中、最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。そして、ここまで中国語を学び続けてきたあなたに、心からの敬意を送ります。

 みなさんの中国語学習が、これからも楽しく続いていきますように!

 

2025.03.10  瀋陽にて
          塩山恵