ちゃーちゃん@中国瀋陽

オンライン中国語講師|中国語ネイティブの発音と、より楽しく学べる方法を模索中|漫才や“脱口秀”など、面白い事(言葉遊び)が大好きな関西人

◆スポンサーリンク◆


究極の中国語リスニング Vol. 1 発売記念(4)

 『究極の中国語リスニングVol. 1』発売記念として、前回は私自身のこと、出版の流れ、そしてチームとなり一緒に執筆してきた先生方や編集者についてご紹介してきました。今回はリスニング教材として、「音」を支えてくださるナレーターの先生方のお話をしていきます。

www.chachan-china.com

 

 

録音秘話

 本書のリスニング教材は、4名のプロフェッショナルなナレーターの先生方によ って収録されました。リスニング教材だからこそ、音の質に徹底的にこだわり、1課の収録に30分以上かかる場面もありました。

 ナレーターを務めてくださったのは、以下の先生方です。

 収録は数日にわたり行われましたが、学ぶことが非常に多かったです。例えば、私たち日本人同士の会話では、

  • 「あした~」(ありがとうございました)
  • 「しゃせ~」(いらっしゃいませ)

 のように、音が省略されたり、曖昧になったりすることがあります。中国語でも同様に、会話の中では声調が微妙に崩れたり、発音が自然に変化することがあります。

 これは学習者にとって非常に興味深い部分であり、一方で「教科書通りの発音」との違いに戸惑う部分でもあります。(書籍の「スキルアップ」でもこの件について記載していますので、ぜひ手に取っていただきたいと思います。)そのため、「学習者にとって聞きやすい発音」と「自然な発音」のバランスをどう取るかは、大きな課題でした。

 この難しい課題に対して、ナレーターの先生方、著者の先生方、編集のりっひさや収録スタジオの方々、そして今回編集協力をいただいた『時事中国語の教科書』の著者・古屋順子先生の全員が一つのチームとなり、何度も調整を重ねました。「音」に徹底的にこだわるこの時間は、単なる録音作業ではなく、中国語の本質に迫る貴重な学びの場でもありました。

 

憧れのナレーターと夢の対面

 特に、李洵先生の大ファンである私は、収録の前日から緊張のあまり眠れないほどでした。「自分が書いた原稿が、李洵先生の声となり、命を吹き込まれる」――それを想像しただけで、興奮と緊張が入り混じる感情になりました。

 そして、いざ収録が始まり4名のプロのナレーターが持つ圧倒的な表現力に、ただただ引き込まれました。

  • 息遣いの調整
  • 「間」の取り方
  • 抑揚のつけ方

 すべてが、まるで生きた会話のように自然で、表情豊かなのです。収録が進む中で、私は改めて「中国語の音の持つ力」を実感しました。

  • テキストを目で読むのと、実際に音声で聞くのとでは、理解の仕方が大きく異なる。
  • 抑揚やリズムによって、同じ文章でも伝わり方が変わる。
  • ナレーションの「間」の取り方一つで、リスニングのしやすさが大きく変わる。

 今回の録音を通じて、私自身も「中国語をどう伝えれば、もっと学習者にとって学びやすいのか?」という問いを、深く考えさせられる時間になりました。

 

ナレーションを通して伝えたい想い

 さらに収録の終了時に上野先生のお計らいで、李洵先生と直接お話をさせていただく機会をいただきました。

李洵先生は、

  • 「ナレーションを通じて、日中友好のために何か力になりたい」
  • 「自分の声を通して、少しでも中国語の楽しさを伝えられたら」

 と、熱い思いを語ってくださいました。その言葉を聞きながら、ふと頭に浮かんだのは、かつての自分――。中国語がまったくできず、授業で悔し涙を流し、「もう帰国したほうがいい」とまで言われた、あの頃の私でした。

 

 「語学は続けた者が最後に笑う。」

 

 そう励ましてくださった万先生の言葉が、何度も脳裏をよぎりました。李洵先生のナレーションを聞きながら、「あの頃の自分が聞いたら、どんな気持ちになるだろう?」 と、ふと思いました。

 おそらく聞いた瞬間、「もっと中国語がうまくなりたい!」と、さらに強く思ったはずです。

 中国語を学び始めたばかりの頃は、意味が分からなくても、「この音の響きが好きだな」と感じることがあります。そしてその「好き」という感情が、長く学び続ける原動力になるのです。だからこそ、私たちの教材の音声も、単なるリスニング教材ではなく、

  • 「聞いていて心地よい」
  • 「もっと聞きたくなる」

 そんな教材でありたいと、改めて強く思いました。

 

録音を通じて得た新たな学び

 今回の録音作業を通じて、改めて「音が持つ力の大きさ」を実感しました。

 普段、私たちは何気なく言葉を発し、聞き取っていますが、言葉は単なる文字の羅列ではなく、声に出した瞬間に「響き」や「抑揚」「リズム」を伴うことで、より深く伝わるものになるのだと強く感じました。また、ナレーターの先生方のプロフェッショナルな仕事ぶりを目の当たりにする中で、ナレーションの持つ役割の重要性も改めて考えさせられました。

  • 発音の正確さだけでなく、伝わりやすい「間」の取り方
  • 聞く人にとって心地よいテンポやイントネーションの工夫
  • 自然な会話の流れを表現する抑揚のつけ方

 これらの要素が組み合わさることで、単なる「音声データ」ではなく、学習者にとって実際に「使える」リスニング教材へと昇華していくのだということを実感しました。さらに、録音を通して、「音が学習に与える効果」についても深く考えさせられました。

  • 「目で読む」よりも「耳で聞く」ほうが、言葉のリズムやイントネーションを直感的に捉えやすい
  • 音の抑揚や強弱によって、文のニュアンスが自然に理解できるようになる
  • 繰り返し聞くことで、言葉の定着がよりスムーズに進む

 このように、「文字情報」だけでは伝わりにくいニュアンスや、実際に話される中国語のリアルな雰囲気を、音を通して学ぶことの大切さを改めて実感しました。

 この書籍が、単に「リスニング力を上げる」ためだけの教材ではなく、

  • 「中国語の音そのものを楽しむ」
  • 「言葉の響きやリズムを感じながら学ぶ」
  • 「より実践的な中国語に触れることで、自然なリスニング力を養う」

 そんな教材として、多くの学習者の方々に役立てていただければ、これ以上の喜びはありません。録音を通じて得たこの学びを、少しでも多くの方と共有し、中国語を学ぶ楽しさを感じていただければと思います。

 

おまけ──採用されなかったテーマたち

 本書に収録されているテーマは、どれも著者陣がこだわり抜いて選んだものですが、実は、その裏には「没ネタ」と呼ばれるものが存在します。

 没ネタには大きく分けて2種類あり、

  • 一度作品として提出したものの、最終的に採用されなかったもの
  • 提出さえもされなかったもの

 があります。採用されなかったテーマの中には、ストーリーとしては面白いものの、学習レベルに合わなかったものや、語彙が難しすぎたものがいくつもありました。また、テーマとしては面白いのに、他の課とのバランスを考えるとどうしても収録できなかったものもあります。

 提出さえもされなかったものについては、執筆の途中で「これはちょっと難しすぎるかも…」と自ら判断して却下したものもありました。

 こうした没ネタたちは、一度世に出るチャンスを逃してしまいましたが、今後何かの機会に恵まれたときに、お披露目できる日が来ればいいなと思っています。日の目を見なかったテーマたち」が、いつかどこかで皆さんのもとに届く日を楽しみにしています!

 

 さて、明日はとうとう最終話。どんなお話が飛び出すか、ぜひお楽しみに!