ちゃーちゃん@中国瀋陽

オンライン中国語講師|中国語ネイティブの発音と、より楽しく学べる方法を模索中|漫才や“脱口秀”など、面白い事(言葉遊び)が大好きな関西人

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究極の中国語リスニング Vol. 1 発売記念(3)

 『究極の中国語リスニング Vol. 1』発売記念として、このシリーズも第3話を迎えました。第1話は私自身のこと、第2話は出版の流れについて書いてきました。

 

今回は、他の先生方や編集者りっひさんについてもお話していきます。

 

 

原稿書き

 出版が決まり、興奮と喜びに包まれたのも束の間、いざ執筆が始まると、その道のりは想像以上に遠いものでした(私にとっては…)。

 というのも、出版に関わること自体が初めての経験だったため、できるだけ迷惑をかけたくないという気持ちとは裏腹に、自分の力不足を痛感する場面が多々ありました。

 本書では、30課(30のテーマ) が用意されており、それぞれの著者が思いを込めて書き上げています。私もいくつかの原稿を担当し、レッスンで実際に質問されたことを必ず1つは織り込むようにしました。

 質問の内容は、文法事項や中国語の表現、さらには文化に関することまでさまざまです。どの先生がどの原稿を書いたのかを想像しながら聞いていただくのも、楽しみの一つかもしれません。

(「『 究極の中国語リスニング Vol. 1』誰がどのテーマを書いたか当てるワクドキゲーム」はこちらから!)

 

 また、テキスト用に架空の会話を作るのではなく、私自身の中国留学や就職、そして日常生活での体験、特に失敗談をベースに執筆しています。これによって、よりリアルな中国語のやりとりや、実際の場面で役立つ表現を学んでもらえたらと思います。

 

解説の執筆に苦しむ…!

 ここだけの話ですが、本文の原稿自体は比較的スムーズに完成しました。しかし、予想以上に苦労したのが解説の執筆でした。

本書では、

 という構成の後に、本文中で説明が必要な部分を解説するセクションがあります。この解説部分の執筆は、私にとって最も大変な作業でした。

 まず、どの部分を解説するかを取捨選択しなければなりません。そして、それ以上に悩んだのが、「どう解説するか?」 でした。

 文法用語をできるだけ使わず、文字数の制限内で、誤解のないように伝えるというのは、想像以上に難しい作業でした。試行錯誤を繰り返し、他の先生方や編集担当のりっひさんにもアドバイスをいただきながら、何度も何度も練り直しました。まさに、生みの苦しみを味わいながら、最後まで粘り強く取り組みました。

 

ミーティングで

 執筆が進む中で、この書籍をより良いものにするため、私たちは毎週ミーティングを開いていました。

 このプロジェクトは2024年6月にスタートし、約9か月間にわたる制作期間がありましたが、その間、毎週毎週短くても3時間、長い時には6時間に及ぶミーティングを重ねてきました。

 長時間の議論や、お互いの原稿を細かくチェックしながらアドバイスを交わす中で、それぞれの先生方の人柄や熱意を間近で感じることができたのも、私にとって大きな学びでした。

 

リーダーとしての上野先生

 上野振宇先生は、リーダーとしてチーム全員の意見を引き出し、まとめる力に長けた方でした。

 書籍のクオリティを最優先にするために、時にはあえて「悪役」に回る場面もありました。USJをV字回復させたマーケター・森岡毅さんが、“To Be Nice, To Be Cool”を意識してリーダーシップを発揮したように、上野先生も、時に厳しく、時に優しく、私たちを引っ張ってくださいました。

 ミーティングの合間の雑談では、いつもの穏やかで優しい上野先生に戻られ、締めなければならないところは、きちんと締める。その切り替えの速さと集中力には、ただただ感嘆するばかりでした。さらに、今回のようなテキストの出版に携わるのが初めてだった私たち3人にとって、唯一の経験者である上野先生の存在はとても大きな支えでした。

 制作全体を見渡しながら、「次のステップに進むために今何をすべきか」 を常に考え、ご自身が先頭に立って指し示してくださる姿は、本当に心強いものでした。また、書籍全体の「見え方」や「統一感」にも細心の注意を払われ、細部までバランスを考えながらまとめてくださったことも、とても印象的でした。それだけでなく、私たちの強みを最大限に引き出しながら、チームとしての調和を生み出す力にも優れていました。

 上野先生のリーダーシップの素晴らしい点は、単に「指示を出す」ことではなく、それぞれの意見を尊重しながら、より良い方向へと導いてくださることです。時には意見がぶつかることもありましたが、そのたびに上野先生は冷静に状況を整理し、最善の解決策を提示してくださいました。それによって、議論が前向きに進み、最終的に「より良いものを作るためにはどうすべきか」を全員で考える場が生まれました。

 また、私たちの執筆に対しても、的確なフィードバックをくださるだけでなく、良い点をしっかりと認め、励ましてくださることで、私たちのモチベーションを支えてくださいました。

 このようなリーダーシップがあったからこそ、長期間にわたるプロジェクトを最後まで一丸となってやり遂げることができたのだと思います。「厳しさ」と「優しさ」を兼ね備え、チームを導く姿勢には学ぶことが本当に多く、「この方と一緒に仕事ができて良かった」と心から思いました。

 

細部までこだわる太田先生

 太田匡亮先生は日中の語彙を専門とされていることもあり、細かい表現や用法まで徹底的に確認してくださいました。

 こうした作業は、一見すると地道で細かすぎるように思える部分かもしれませんが、言語学習者にとって「わかりやすさ」と「正確さ」を両立させるために不可欠なプロセスでした。特に、日本語と中国語の間には一見似ているようで異なる表現が数多くあります。そのため、ただ翻訳するだけでなく、どの言葉が学習者にとって最も自然で適切かを慎重に検討する必要がありました。

 例えば、ニュアンスの違いや語感の微妙な変化を考慮しながら、私たちが普段何気なく使っている表現についても「本当にこの訳が適切なのか?」と、一つひとつ検証してくださいました。また、文脈によって適切な訳が変わる単語については、辞書の定義だけではなく、実際の使用例を引き合いに出しながら丁寧に説明してくださる場面も多くありました。

 こうした作業は、細部へのこだわりが求められる一方で、伝え方によっては執筆者との間に不穏な空気が流れる可能性もあります。

 しかし、太田先生のお人柄と細やかな配慮、そして研究に裏打ちされた知識のおかげで、一度たりともチームの関係が揺らぐことはありませんでした。また、指摘の仕方にも常に配慮があり、「より良くするために」という前向きな姿勢を持って伝えてくださったことが、とても印象的でした。

 

頼れるネイティブの許先生

 許挺傑先生は、唯一のネイティブスピーカーとして、中国語表現の要をすべて支えてくださいました。また、日本語への深い理解も持たれている一方で、専門である中国語に関するどんな質問にも的確に答えてくださるその姿は、私の中でまさに「生き字引」のような存在でした。さらに、許先生は気配りの達人でもあり、その温かい言葉に何度も救われました。

 時に議論が白熱し、意見がぶつかりそうな場面でも、許先生の冷静で柔らかい言葉が、場を和ませ、自然と空気を落ち着かせてくれるのです。また、チームの考えがどちらか一方に偏りそうになったときには、まるで「中庸の精神」を体現するように、絶妙にバランスを取ってくださっていたように思います。

 私自身も海外で生活していますが、許先生のように地域に溶け込み、異文化を深く理解しながら生きることの難しさを痛感しています。

 それだけでなく、異文化の中で「単に適応する」のではなく、自分自身の文化的アイデンティティを大切にしながら、相手との共通点を見つけ、橋をかけるように関係を築いていく姿勢は、私にとって大きな学びでもありました。

 許先生がいなければ、この書籍の中国語の精度はもちろん、チームのまとまりも、今とは違ったものになっていたかもしれません。それほどに、許先生の存在は大きく、頼もしいものでした。

 

縁の下の力持ちりっひさん

 編集担当のりっひさんは、常に「学習者の視点」を大切にされる方でした。

 さらに、ミーティングでは意見を言いやすい雰囲気を作るのがとても上手で、沈黙の時間をうまく使いながら、私たちに考える時間や発言の機会を与えてくださいました。

 私はレッスンで「しゃべらない努力」を意識することがありますが、それでも沈黙が怖くなる瞬間があります。しかし、りっひさんの進行は、「緩急」の使い方が絶妙で、学ぶことばかりでした。

 さらに、りっひさんは英語・中国語に加え、フランス語・ドイツ語・アラビア語など、多くの言語に精通されており、言葉に対する感覚が鋭く、細かなニュアンスや表現の違いについても的確な指摘をしてくださいました。単なる言語知識ではなく、「この言葉をこう変えることで、学習者にとって理解しやすくなる」「この説明の仕方だと、誤解を招く可能性がある」といった、実際の学習者の視点に立ったアドバイスが、本当に貴重でした。

 加えて、私たちはそれぞれ異なる地域に住んでいたため、Googleスプレッドシートを活用して編集作業を進めていましたが、りっひさんはスプレッドシートの関数マスターでもありました。データがバラバラにならないよう整理しながら、私たちの原稿が一つのまとまりある作品へと変わっていく過程は、まるで魔法を見ているようでした。

 さらに、原稿の調整だけでなく、締め切りの管理やスケジュール調整にも細やかに気を配ってくださいました。ミーティングのたびに「今どこまで進んでいるのか」「次に何をすべきか」を的確に示してくださるおかげで、私たちは迷うことなく作業を進めることができました。

 こうした裏方としてのサポートがあったからこそ、私たちは執筆や内容のブラッシュアップに集中できたのだと思います。まさに、「縁の下の力持ち」という言葉がぴったりの存在でした。この書籍が形になるまで、見えないところでどれだけのサポートをしてくださったのかを考えると、感謝の気持ちでいっぱいになります。

 

さらなるお人柄はぜひ、YouTubeで!

 このように、9か月にわたるプロジェクトは、本当に素晴らしいメンバーとの出会いに支えられながら進んでいきました。文字では伝えきれない部分もあるかと思いますので、ぜひ続きは『言語の部屋』のYouTubeでご覧いただきたいと思います。

youtu.be