ちゃーちゃん@中国瀋陽

オンライン中国語講師|中国語ネイティブの発音と、より楽しく学べる方法を模索中|漫才や“脱口秀”など、面白い事(言葉遊び)が大好きな関西人

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情熱中国(5)【佐藤航平さん】

中国にゆかりのある「人と人」「人と情報」をつなげたいと、先月から新企画として

稼働し始めた「情熱中国」

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(※決してパクリなどはしておりません。もとが良いので敬意を表し、少々拝借しているだけです。)

 

これまでに4名の方にご参加いただき、お一人お一人異なる立場、異なる視点から、

中国に関わる事柄を、大いに語っていただいた。

これまでの『情熱中国』の記事はこちらをクリック

 


 

さて本日第5回目のゲストは、やっとお呼びできた初めての男性ゲスト。

中国で起業経験もお持ちで、さらにお忙しい合間をぬって中国国内各地に繰り出し、

現地の方々との交流で、中国の今、生の声、思想や時代の移り変わりを肌で感じながら、

ご自身の思慮をより深く、アイデンティティをさらに確立されていらっしゃる、佐藤航平さん。

佐藤航平(元牛乳屋) (@milkshop) | Twitter

 

佐藤さんとの出会いは、以前ブログでも取り上げた『#中国川柳』へのツイート作品が

どれも“声を奪われる程”の完成度であり、この方は天才だと思ったところから始まる。

 

五七五の合計17文字に、中国の古今東西を生き生きと表現され、時にはユーモアを

また時には皮肉を織り交ぜ、何十作品も発表されていた。

「中国の酸いも甘いもご存じの方だ」と、全ての作品を夢中になって拝読した。

 

そのご縁から、佐藤さんのツイートを多く拝見するようになり、論理的思考、瞬発力、

人間観察力に舌を巻いた。

 

さらに佐藤さんをはじめ、ECサイトのディレクターのビントウさん、中国駐在商社マンのまめさん

そして上海で現地採用光平さんの4名で「Team Youchina」を結成され、中国を始め

世界に羽ばたき、功績を残そうと努力している方々を応援されている。

Team youchina

 現地採用、駐在、インターン、起業・・平成生まれの世代である4名が、どのような思いで中国で挑戦し、成功し、失敗し、笑い、泣き、喜んだかを文章にします。中国が舞台ですが、グローバルに生きていきたい思いがある同世代、先輩方や年下世代の背中を押せる力になりたいと思います。

 https://note.mu/youchina

 

その中で『YOUは何しに中国へ?【起業編】』と題し、佐藤さんと中国とのエピソードとして

略歴、私と中国、前職と中国渡航のキッカケ、現地でやっていたことなどが語られていた。

 

それらの質問に対し、さらに踏み込んだ考えをお伺いできればと思い、今回お声掛けを

したところ、快く引き受けてくださった。

それでは頭脳明晰で簡潔明瞭、物事に対する瞬発力があり、鋭い視点と中国での起業という

ビジネスの荒波をご経験されたことから発せられる、説得力のある佐藤さんへのインタビューを、

ぜひご覧いただきたい。

 


 

 この度はインタビューにご参加いただきありがとうございます。
 早速ですが、「近いけど遠い国」の中国。一番大きな矛盾の原因は何だと思いますか?

 メディアの影響が強いと思います。1977年に日本政府が行ったアンケートによると、アジア諸国の中で中国と最も良好な関係を構築すべきと回答した人が、66%に達していました。また1980年には、中国に対して親しみを感じると回答した人の割合が78.6%でした。その頃は、先進国である日本が途上国である中国を支援するという明確な構造があったことも背景にあると思います。中国の国力(経済力と軍事力)が増すに連れて、その構造も崩れ、自らの地位を危うくする脅威だと思われるようになったのかもしれません。

 

 確かに70年代、80年代の中国に対する現在の未来予想図と現実はずいぶん異なり、「眠れる獅子」と言われながらも、ここまでの発展は正直、想定外だったように思います。
 2002年に初めて訪中されてから、心の中に中国の存在があったと思うのですが、それでも日本で手にしたもの(三井住友銀行)を捨ててまで、なぜ中国で起業をしようと思われたのでしょうか? 日本で中国人向けのビジネスを選ばれなかったのはなぜでしょうか?

 自分の心がそちらに向かったからです。世の中的には様々な模範解答が存在することは、十分承知しています。しかし、私はどうしたら人生が豊かになるのかを考えた結果、少し危なくても「中国で何かビジネスを立ち上げたい」という思いを実現すべく、心の赴くままに動くことを選びました。

 

 私も留学を決めた時は、就職先を退職してまで行かなくてはならないことかと、周囲からの猛反対を受けました。しかし佐藤さんと同じように「今飛び出さないと、一生後悔する」という思いがあったのだと思います。
 起業の方は残念なことに、約1年で事業閉鎖をご決断されたわけですが、その一番の原因は何だったと思われますか?

 人の問題が最も大きいです。経営層の空中分解が、後の失敗に繋がっていたのだと思います。

 

 経営層の深まる溝について、『YOUは何しに中国へ?』でもお話しされていらっしゃいましたよね。そのご経験も踏まえ、中国にいる日本人が、中国で起業する日本人にできることは何だと思われますか? あるいはどんな“助け”があると良いと思われますか?

 「心のよりどころ」や「居場所」だと思います。
 現地を深く理解するためには日本人を避けろと言われることもありますが、私はむしろ逆で同じバックグラウンドを持つ同胞として、揚げ足を取らずに結束してもいいのではないかと思っています。同じ文化的背景で育った方々との結びつきは、心強いものがありますし、共感できるような話も多くあります。ストレスで大変な時期がありましたが、なんとか生き延びたのは、現地にいた多くの日本人の方々が「心のよりどころ」や「居場所」を作ってくれたからだと思います。

 

 「心のよりどころ」「居場所」。自分を受け入れてくれる人、認めてくれる場所があることは、最後の最後で踏みとどまる力を与えてくれますよね。
 事業閉鎖やネガティブ感情から脱皮されたことを通し、これから中国で起業したいと思っている日本人、あるいは起業しようと思われたときのご自身にアドバイスをするとすれば、どんなお声掛けをされますか?

 「中国で暮らしていくのはいいとして、普通に暮らしているだけで、ある日、突然何もかもを失ってしまうことがあるかもしれないが、それでも本当にいいのですか?」という覚悟が必要です。

 

 中国社会で生き抜いていくためには、覚悟をする回数は日本でいる時よりも、明らかに多いと私も思います。私も妊娠をしたときに「生半可な覚悟」なら、日本で出産すべきだと思いました。起業もある意味では“生む”ことですから、似ていることがあるかもしれません。
 それではビジネスパーソンの目から見て、これから日中関係はどのような形を辿ると思いますか?

 2010年代初頭のように最悪な状態に陥ることはなく、現在のような安定状態が比較的長く続くと見ています。日本の貿易総額の27%が中国であり、訪日中国人数は2018年で約840万人です。日中間の人・モノの往来は密接かつ大きなものとなっています。また、米中両国の経済や地政学的な対立の中で、日本が中国側に完全に寄ることはないにせよ、今のような状況を乱す理由は無いだろうと思っています。

 

 私も日本と中国両国間は、安定的な関係が続いていくと思っています。ただ一番始めのお答えでもありますが、マスコミによって操作された情報で、偏った感情だけが暴走しないでほしいと願っています。
 Team youchinaやツイッターの発信内容から、佐藤さんはビジネスへの感覚が非常に鋭い方だと感じています。そこでビジネスパーソンとしての夢、あるいはゴールは、どんなことなのかをぜひお伺いしたいです。

 欲の実現だと思います。日本と中国を行ったり来たりして思ったこととしては、日本では貪欲な人の存在がなかなか目立たないと思っています。どんなに崇高な理念を掲げても、「裕福になりたい」「モテたい」「有名になりたい」という欲が原動力だと思います。欲が原動力になることは決して悪いことだと思いません。これは会社員でも、事業家でも、同じことが言えるのではないでしょうか。

 

 そんな思いもあり、Team youchinaを結成されたのだと思いました。YOU CHINAについて少しお聞かせいただけないでしょうか?

 YOU CHINAは様々な背景のもと、中国に渡った平成生まれの若者が座談会形式で、自身やゲストの中国での経験を語り合う記事を発出しています。「どう感じたのか?」という点を中心に、赤裸々に話しています。是非ご覧ください。

 

 これからも拝見いたします。
 時間が過ぎるのは早いですね。中国での経営などのさらに詳しいお話しは、またの機会をいただくとして、非常に残念ではありますが、最後に一言お願いできないでしょうか? 

 中国で生きるためには、「楽しく過ごすこと」と「自分の頭で考えること」の2つが重要だと考えています。
 まず、中国社会は変化のスピードが速いことや、人が多いため、周囲のことばかり気にしていると、大きな「流れ」に飲み込まれます。そのため、小さな幸せを見つけて楽しく生きていく習慣ができると、充実した毎日を過ごせると思います。
 最後に、「日本はダメだ、中国に負けた」「アリババやテンセント凄い!!」という語調だとTwitter映えしますが、過大評価しすぎです。テンセントやアリババ、その他のトレンドに関心が集まりやすいのは事実です。ただ、2018年の中国の名目GDP(90兆309億元)に対して、アリババ(2502億元)やテンセント(2377億元)なんて、足しても0.54%です。つまり、ハイテク企業のプラットフォームが生活を大きく変える付加価値を打ち出そうとも、圧倒的多数はハイテク企業とはかけ離れた世界や価値観で生きている人々なのです。その人々の生き様や思いから学び取らないと、中国の本当の課題や将来は見えてきません。変わる中国の陰には、必ず変わらない中国があります。変わる時ほど「変わらない中国」を、見つめていけるようにしていきたいと思っています。
 Twitterは中国の変化する部分が目立ちがちですが、中国や中国人の変わらない部分や闇の部分に関してはなかなか目立ちません。そういった部分を向き合って行くことで、中国や中国人への理解が深まればと思いっています。

 全くその通りですね。私も中国で生活をし、周りで起業をしている方が多いこともあり、今回のお話をいろんな方向から考えながら拝聴させていただきました。教科書やネット上にあふれる情報の中の中国ではなく、自分の目で耳で、足を使って感じそして考えるそんな中国への触れ方が大切だと、改めて思いました。
 本日は誠にありがとうございました。これからもその鋭い考察力で、中国の真の姿を発信していただきたいと思います。

 


 

毎回先にインタビューのご質問をお渡しするため、こんな感じの回答が来るのではないかと

ブログやツイッターなどの発信内容から、いろいろ回答予測をするのだが、正直今回ほど

予想外のお答えをいただいたことはなかった。

 

このように周りに流されず、また物事に対し完全否定をせず、良いところは取り入れる

という柔軟性に、感服せずにはいられない。

 

また数字に関わる仕事に関わっておられたこともあり、会話の中でもたくさんの数字が

ポンポンと飛び出してくる。

一見これらは容易に見えるが、数字に関わる出来事をミクロそしてマクロの両方の視点から

捉えなければ、頭でっかちだけのデータ収集者で終わってしまう。

それを時間を見つけては、中国各地に足を運び、ご自身でその事実を体験し、確かめ、

身体に刷り込み消化された数字のため、データ集などでは絶対に感じられない血の通った

人間のように、数字に命が吹き込まれ、説得力がでてくるのである。

 

Team youchinaでも、ご意見番的なポジションで今回のインタビューのように、言葉数は

それほど多くはない。しかし的確にポイントを押さえ、確実に存在感を発揮していく。

座談会での発言も、向上心が垣間見られるようなものが多く、まさに“青の炎”のように

冷静な中に熱いものがある方だと、感じずにはいられない。

きっとこれからもこの青の炎で、きっと今までベールに包まれていた中国のいろいろな

事柄を照らし続け、私たちに届けてくれることだろう。 

 


 

これまでの『情熱中国』の記事はこちらをクリック

 今後も中国(あるいは中国関連)で奮闘される方を取材、あるいはインタビューをし、「人と人」「人と情報」をつなげたいという理念のもと、有益な情報を皆さんにも共有していただけるような、そんな企画になればと思っております。

 ある日突然、インタビュー依頼のご連絡が届いた方には、ぜひ今お持ちの専門性、独自性、影響力等の非常に価値のある情報やご経験、熱い思いを、存分にお伝えいただければと存じます。また逆に中国、あるいは中国語で「こんなことを知ってほしい、こんなことを伝えたい」という情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報いただければ、取材やインタビューをさせていただきたいと思います。

 これからもこの企画をはじめ、ブログをご愛読いただければ幸いです。