ちゃーちゃん@中国瀋陽

オンライン中国語講師|中国語ネイティブの発音と、より楽しく学べる方法を模索中|漫才や“脱口秀”など、面白い事(言葉遊び)が大好きな関西人

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「乳児暴行死 母親に実刑判決」から、中国の育児環境を見る

愛知県豊田市での、生後11か月の3つ子の1人に暴行を加えて死亡させたという事件が

起こり、執行猶予なしの懲役3年6か月という判決が出た。

 愛知県豊田市で生後11か月の3つ子の1人に暴行を加えて死亡させた罪に問われた母親の裁判で、裁判所は「3つ子の育児を懸命に行ったことに同情はできる」とした一方、「執行猶予をつけるほど軽い事案ではない」として懲役6年の求刑に対し3年6か月の判決を言い渡しました。

 愛知県豊田市の松下園理被告(30)は去年1月、自宅で生後11か月の3つ子のうち次男を床にたたきつけて死亡させたとして傷害致死の罪に問われました。

 裁判で被告は「泣き声が耐えられなかった」と話し、弁護士は「周囲の支援がなく重度のうつ病だった」として執行猶予のついた判決を求めていました。一方、検察は「乳児が泣くのは当然で動機は身勝手だ」として懲役6年を求刑していました。

 15日の判決で、名古屋地方裁判所岡崎支部の野村充裁判長は「無抵抗の乳児をたたきつけた犯行は危険で悪質と言うほかない」と指摘しました。そして「うつ病になる中、負担が大きい3つ子の育児を懸命に行ったことに同情はできる」とした一方、「執行猶予をつけるほど軽い事案とは評価できない」と述べ、懲役3年6か月を言い渡しました。被告の弁護士は、刑が重過ぎるとして名古屋高等裁判所に控訴する考えを示しました。

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190315/k10011849981000.html

 

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 https://gifutatainet.com/?p=7334

 

もちろん人を殺めることは、決して許されるべきことではない。

しかしどれほどかわいい我が子であっても「感情を理性で抑えても、抑え切れない」と

思うほどの苛立ちを感じてしまうことは、どんな親でも経験があるのではないだろうか。

しかもそれが寝不足と周りの助けがないことが重なり、心身ともに追い詰められていれば、

そのリスクはさらに高くなるのは、火を見るよりも明らかだ。

 

私もたった一人の我が子だが、授乳と搾乳で寝不足が続き、さらに初めての育児とあり

一生懸命であればあるほど、子供が泣き続けたとき「なぜそんなに私を責めるの」と

行き場のない感情が頭を駆け巡り、回数が増えることで怒りに変化したことがあった。

 

記事によれば、次男はほかの2人に比べ母乳をよく吐き出し、発育も2人に比べ遅かった

とのこと。同じように愛情を注いでも、それが形となって見えづらい現実に、

自責の念を感じると同時に、「責める」という怒りの方向が疲れから自分から相手へと移り、

それが何かの拍子に爆発してしまったのではないだろうか?

 

この親子、そしてご主人や周りの対応方法を含め、このケースがもし中国だったら

果たしてどうだっただろうか? 「たら、れば」はないが、そう考えてしまった。

そこで、本日は中国の子育て事情をご紹介したいと思う。

 


 

まず基本的に子育てを(母親)一人ですることとは思っていない。

現在、子育て真っ最中の“親”は基本一人っ子同士。そのため両家の祖父母が、

いろんな形でサポートする。

 

私より1か月先に出産を経験した、中国人の友人。

1か月検診を終えた頃、出産祝いを持って遊びにきてくれた。

睡眠不足真っ最中の私。お互いがんばろうという意味を込め、彼女に質問した。

「夜は少しでも睡眠がとれ、体を休めることができてる?」と。その答えがあまりにも

衝撃的で抱っこをしていた我が子を、落としてしまいそうなほどだった。

「夜は私の母と主人の母が見てくれるから、出産前とあまり変わらずきちんと寝てるわよ。

授乳も誰でもあげられるようにと、ミルクも飲ませてるから心配しなくて良いし」。

 

またご両親がお年を召されており、手伝ってもらえないママ友に同じ質問をしても

「阿姨(=お手伝いさん)が泊まり込みでいるから、問題ないわよ。」とのこと。

 

やはり、子育てを(母親)一人ですることとは思っていないのだ。

 

子供が幼児になっても、そのサポートは続く。

もちろんこの背景には出産休暇が最長98日という、国情があるのも否めない。

基本産前半月、産後2か月半という短さで、つまり産後4か月を待たずに、大多数の女性は

社会復帰をする。

(高齢出産の場合は前後4カ月まで、難産は+15日、双子以上の場合は一人につき

さらに+15日ずつ追加。2019年国家规定产假多少天-产假|华律办事直通车

そのため基本的な子供の世話は、祖父母の担当であり、両親は“稼ぐ”ことに集中する。

 

身内の話になるが義弟夫婦も例外ではない。夫婦そろって医師と言うこともあり、

とにかく忙しい。そのため義両親と義弟の奥さんのお母様の3人が、義弟夫婦と一緒に暮らし、

家事と育児を担当。そして義弟夫婦は仕事に専念している。

義弟はメディアにも出るほど忙しく、奥さんは大学院のDr.(ドクター)の入試を控え

勉強をしているため、子供との時間はほぼない。

 

以前この状況に主人に疑問符を投げかけたが、

「稼げる人が稼ぎ、時間がある人が家事と育児を担当する。言うなら一族はチーム、

自分のできることを分担している。ただそれだけの事」という回答だった。

この春節で2歳になったばかりのミンミン、まだまだママが恋しい年齢。

「弟夫婦の価値観は、金銭的に与えてあげられるものを与えてあげたいという考えだから」

という主人の分析。

「それが全ての中国人の考え方ではないが、大多数だと思う。僕は違うけど」と教えてくれた。

 

余談だが主人は、「小学校に上がるまでは、できるだけ子供と一緒に過ごしたい」という

私の気持ちを汲み取り、また自分自身が幼少期親元を離れ親戚の家で過ごした経験から、

親として自分の手で育てたいと考え、それを行動に移してくれている。

 

話しの論点が少しずれたので、戻そう。

こちら中国では、育児は多くの人の手で分担され行われる。

そのため夫婦共働きで、しかも夫婦だけで子育てをしている私達は、こんな質問をよく受ける。

「あなたが子供を見ているなら、家事はだれがしているの?」

「あなたが出勤するときは、だれが子供をこども園に送っていくの?」

「ご両親もお手伝いさんもいないなんて、あなたスーパーレディー?」

 

この質問からも、子育てを(母親)一人ですることとは思っていないのだ。

 

このことは上海で9年間子育てをされ、日中子育て比較、主婦目線の中国ビジネスなど

精力的にツイートされている「ねね@上海子育て9年目」さんもおっしゃっている。

その他のツイートでも、

 中国人の双子ママは、昼間は両家の祖父母がヘルプに来て、夜は夫婦のみで育児していて、「夜誰もヘルプいないのすごいね!ってみんなから言われる」と。夜どころか昼も、それも連日ワンオペ育児って普通のことじゃない。

 我が家がまだ阿姨を雇っていない頃、2人の娘を連れて道を歩いていたら「あなた母親?2人も連れてエライわね。で、家事は誰がやってるの?」とよく聞かれた。これが意味するのは、私が育児担当とすれば、当然、家事担当の人が別にいるんでしょ?ということ。1人で家事育児やってるというと驚かれる。

 

https://twitter.com/nenenotebook

 

さらに違う角度から見ても、中国社会全体として子供に対して寛容である。

良い悪いは別にして、「子供がしたこと」という免罪符がきく。

少々極端な例だが10年程前四川で旅行中、観光バスで移動していた時、トイレがないからと

車内(出入口の階段のところ)で、3歳児に用を足させる両親がいた。それに対し、

運転手やガイドさんを含め、乗客のだれからも何の声も上がらず、ビックリした経験がある。

 

日常生活では、通常この団地内は車の乗り入れが禁止されているが、「子供が病気で」

との一言で、申請をしなくとも門をすぐに開け、通してくれたりする。

公共機関に乗車した際、子供が泣けば誰ともなく声をかけあやしてくれたり、

ベビーカーで移動していれば、ドアを開けスムーズに通れるようにしてくれたりする。

 

「人に迷惑をかけてはいけない」と教え込まれて育った日本人からすれば、

時に捉え方に依ってはおせっかいと思うかもしれないが、とにかく知らない人からも

いろいろと手を差し伸べてもらいやすい。

 

子供は宝。みんなで育てるというような考えが根強い。

 


 

今回この母親を取り巻く環境や条件が中国式だったならば、おそらくこのような

痛ましい事件は、起こった可能性が限りなく低かったのではないだろうか。

 

また残された二人の子供は母親にも会えず、さらに忙しい父親と祖父母という環境の中で

どうやって育っていくのだろうか? 

 

この判決を受け、先日執行猶予を求める署名が2万件集まったという記事を見た。

この母親には残された2人の子供の面倒を懸命にみることが、本当は一番の“懲役”のように

私は思えてならない。なぜなら普通の親であれば残された2人の子供を見て、次男のことを

思い出さないはずがないからだ。

また残された2人の兄弟にとっては、判決が言い渡されたときが終わりではない。

これからの人生の方が長く、そして厳しい。

そのためこの2人の兄弟をしっかり、強く生きていけるように導いていくことこそが、

この裁判の判決よりも、もっと大切なことではないだろうか?

 

最後に次男さんのご冥福と、この女性を含む家族のみなさんに笑える日が訪れること、

そして何より残された2人の兄弟が「生まれてきてよかった」と思える日がくるよう

遠い空の下、心から祈ってやまない。