この10年、20年ほどで、中国は大きく変化した。
経済、街並み、サービスに対する意識・・・。
しかし私の中で、一番変化した1つではないかと密かに思っているもの、
それは「公衆トイレ」。
留学2年目を迎えた2005年、四川をバスツアーで旅行中に立ち寄ったトイレは
中国の広大な大地に、穴を掘ってあるだけだった。
ドアもない、鍵もない、もちろん便器も紙もない。
ただの「穴」。
それでもツアー客は、ごく自然に用を足していくので、
「エライところに来ちゃったな」と、思ったものである。
幸い、超田舎育ちの私。「大地の中で」というのは幼いころの経験から抵抗はないが
他人がいるところで、というのはなかなか勇気のいるものだった。
結局は、背に腹は代えられずだったが。
そう考えれば「人が宇宙に住めてしまうぐらい」進化を遂げた中国トイレ事情。
そこで、今日は瀋陽の公衆トイレ、しかも最新の公衆トイレに密着したい。
2013年に経済史の一つ『第一財経週刊』が一連の経済、政治、学術リソースなどの
指標に基づき、「一線都市ランキング」に次ぐ「新一線都市ランキング」を作成した。
2018年、今年も瀋陽は無事「新一線都市」に選出された。
(※ランキングのため、毎年変動あり)
それの順位を維持すべきかのように、街の至る所の景観を整備し、
公衆トイレの新設、修理、建て替えが進んでいる。
今回取り上げた公衆トイレは、近くに「労働公園」があるため、利用者数も多い。
まずは外観から
両脇には、パイプ煙草(?)とハイヒールのモニュメントがお出迎え。
おそらく男性と女性を表しているのかと思われる。
開放時間は季節によって異なるようだ。夏5時~22時、冬6時~21時。
さっそく中に入ってみる。
一言、「キレイ!」
そこらの「名ばかり高級ホテル」なんかより、よっぽど綺麗で清潔。
あの気になる匂いも全くない。
多機能トイレもあり
日本に比べると、さすがにちょっと設備は乏しいが、
小児科のある病院でも設置率が低い「おむつ換えシート」、
瀋陽国際桃仙空港でもお見かけしない「ベビーキープ」さえ設置されていた。
多機能トイレから出てきて、向かいの壁に目がとまる。
なんとこんなものまで!
「携帯充電器」
携帯が充電し終わるまでトイレにいても、耐えられるというアピールか?(笑)
確かに充電が切れて誰にも連絡が取れずに困っているとき、
トイレで用をたすついでに、少し充電して「充電切れ」宣言をするのは悪くない。
家族や連絡を待っている人に、いらない心配をさせてなくすむ。
ちなみにこの携帯電話は、このトイレを監視している従業員のものと思われる。
さらにこんな機械まで。
「トイレットペーパー無料配布機」。まずは動画をどうぞ!
WechatでQRコードをスキャンすれば、トイレットペーパーが出てくる!
はずなんだが、没出来!?(=出てこない!?)・・・
どうやら詰まって出てこないのはご愛嬌。
さっき携帯を充電していた従業員に伝えると「おっと、また詰まったか」と言って
早速開けて修理していた。
その様子も撮ろうとしたが、「ちょっとここは避けてほしいな」と
ストップがかかったので、撮影はなし。
以前は撮影マナーなどはなかったが、最近はだんだんマナーが問われるように。
ネット上への悪質な投稿の影響もあるだろうが、
人民の教養や、道徳観等が上がってきたというのも理由だろう。
日本では信じられないことかもしれないが、トイレットペーパーは
設置されていない公衆トイレは多い。いや、基本設置されていない。
入口で要求すれば手渡してくれるか、その場で購入あるいは販売機が設置されている。
というのは、まだまだ生活レベルが低く、日々の暮らしが苦しい人も多い。
そのためトイレットペーパーを持って帰る人(=盗みになるのだが)も多くいる。
中には「従業員が持って帰る」ということも、十分あり得る。
それでは、実際にトイレの中に入ってみる。
まずは女性用トイレから。
ドアも(中国ではおなじみの)、半開き状態ではない。
またドアの下半分がなく、足が見え、中に人がいるか確認するタイプのドアでもない。
もちろん、以前のような個室ではなく長い溝があり、間の仕切りがあるだけの
タイプでもない。
荷物フックもきちんと設置されている。
以前、まだ立って間もない我が子を連れて「乳幼児プール教室」に行ったことがある。
友人からチケットを譲り受けたからだ。
レッスンの後、私がトイレに行きたくなり、我が子を抱きかかえながらトイレへ。
入ったまではいいが、ベビーキープも、荷物フックも、何もない。
さらにその日は最悪なことに、スリムジーンズを穿いており、
背中にバスタオルや着替えの入った、重くて大きなリュックを背負い、
片手で我が子を抱きかかえ、もう片手でジーンズを脱いだり履いたり・・・。
我が子とリュック、合計15㎏程を身に着けたままスクワット状態。
そんな思い出が頭をよぎる。
女性用トイレの撮影が終わり出てきた後、男性用トイレの撮影を躊躇していると、
先ほどから幾度か登場している従業員が
「写真撮りたいの?」と聞いてきてくれ、中に男性がいないかどうか確認してくれた。
「今ならいける!」と私を中に招きいれ、
「ここで立って、門番しててやるからさ(ニコッ)」と、ドアの出入口で監視役。
ありがとうとお礼を言うと、「良いってことさっ!」と
まるでフウテンの寅さんが乗り移ったかのような、輝かしい笑顔を見せてくれた。
それでは、男性用トイレもとくとご覧あれ。
ちなみにサニタリーボックスは、
女性同様、使用済みトイレットペーパーを捨てるためにある。
(ちなみにこれは排水管が細く、トイレットペーパーを流してしまうと
詰まる恐れがあるからだ。空港などはだいぶ流せるようになってきたが、
トイレにゴミ箱やサニタリーボックスが設置されているところは、
そこにトイレットペーパーを捨てるのがマナーである。)
トイレから出てきた手洗い場も、水滴一つ落ちていない。
従業員がこまめに掃除をしているからだ。
その他の設備として、殺虫灯や“暖气”と呼ばれる暖房装置も至る所に設置されていた。
全て写真を撮り終わり、満足気にしている私を見て、
「トイレの業者か?」と聞いてくる従業員。
「違う違う。お蔭でいいのが撮れたよ。ありがとう」と話を切り返すと
にこにこしながら、見送ってくれた。
正直、このトイレ事情をご覧になってビックリされた方もいらっしゃるだろう。
以前中国に来て「トイレ事情が受け付けられず、もう二度と中国には行かない!」
そう思っている方も、中にはいらっしゃるだろう。
でも中国は明らかに進化中であり、日本より勝っているところもたくさんある。
例えば「微信(Wechat)や支付宝(アリペイ)のオンライン決済」然り、
無人コンビニ然り。
もちろん今日取り上げたようなキレイな公共トイレは、中国全体からすれば
まだまだ少数派も少数派、ほんの一握り、いや摘みに過ぎないだろう。
しかし「昨日より今日、今日より明日と」高みをめざし、日々向上している中国。
この事実は決して軽んじてはならないだろう。
私が日々、ブログを更新するわけはここにある。
「あなたの知らない中国」「食わず嫌いの中国」を伝えたい!
あなたが感じていた中国とは、少し様子が違うのでは?という問いかけに、
「う~ん。そうかも、しれない・・・」。
そんな風に少しでも思っていただけるようなブログにしたい。
そう思いながら今日も「ありのままの中国」、「伝えたい中国」を探したいと思う。